つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

ハマスが強大軍事国家イスラエルに挑む理由は

 インドのモディ首相が昨年、ウクライナ戦争勃発直後にロシアのプーチンに会った際、「今、戦争する時ではないでしょう」と言ったとか。確かに、モディの言うことは正論です。今、地球上の民は、温暖化、それに伴うエネルギー、食糧事情の悪化などさまざまなグローバル規模の問題に直面しています。そんな時にちまちまとした国境近くのわずかな領土を奪うためにウクライナに攻め込む戦争などする意味があるとはとても思えません。

 今、ロシアは明らかにしていないけど、10万人近くの戦死者を出し、負傷者まで入れると25万人規模の死傷者数だと言われています。この数は1970年代末から80年年代にかけてあったアフガニスタン侵攻戦争時の数を優に超えています。死傷者、膨大な戦費、諸外国との摩擦に加えて、国際刑事裁判所ICC)から逮捕状が出てプーチンICC批准国に二度と行くことができません。それだけの犠牲を払ってまでして、彼が言うところの「(ウクライナ領土の)4つの州」を併合したからと言って、気分よくなれるものでしょうか。

 ロシア圏の防衛組織CSTOの加盟国であるアルメニアが最近、ICCに加盟しました。ICCは「プーチンウクライナの大量虐殺の犯罪者」として逮捕状を出しています。となれば、ICC加盟国はプーチンを逮捕する義務を負いますから、プーチンはもうアルメニアには行けません。カザフスタンのトカエフ大統領も最近、露骨にウクライナ侵攻を批判しています。プーチンはCSTOの中でも徐々に”友人”をなくし、その権威はがた落ちです。ですから、彼の心のうちを読めば、もうウクライナ侵攻は止めたいんでしょうね。でも、戦争は恋愛と同じで、始めるのは簡単でも終止符を打つのはなかなか難しい。

 プーチンにもメンツがあるので、今さら一方的に止めるとは言えない。止める理由が見つけられません。反対に、ウクライナ軍は非占領地域奪回にまい進し、最近かなりの戦果を上げています。プーチンは四面楚歌、可哀そうな状況に置かれています。いずれ2人目のプリゴジンのような奴が出てきて暗殺されるか、あるいは来年3月の大統領選に出ず、体のいい形で引退するしかありません。いずれにせよ、彼がいなくなれば、世界もロシア国民もウオツカを激飲みして喜ぶのでしょうが…。

 ロシアのウクライナ侵攻以上に分からないのが、この時期、中東ガザ地区を支配するパレスチナ系の武装組織「ハマス」が突然イスラエルに向かってロケット砲をぶっ放し、挙げ句に境界線を破ってイスラエル領に侵攻していること。これまでもハマスはロケット砲を発射させたが、戦闘部隊を使ってイスラエル領内に侵攻させるようなことはなかった。イスラエルも報復の空爆をするが、ガザ地区に反撃の侵攻をするようなことはなかった。ハマスが今、強大な軍事国家であるイスラエルに対し真っ向から地上戦を仕掛ける理由が良く分かりません。

 まあ、巷間言われているのは、サウジアラビアや穏健中東諸国がイスラエルと関係復活を図る気配を見せ、パレスチナ問題を置き去りにするような動きがあることや、ガザ地区内の経済悪化によって住民がハマス支配に反発を持ち始めていることがあると言います。ですから、ユダヤイスラムの聖敵であることを再認識させるためにイスラエル侵攻に踏み切ったとも言われています。でも、それにしてはあまりにも危険な賭け。イスラエル軍は中東では最強の軍隊を持っており、ガザに侵攻しハマスをひねりつぶすぐらいわけはないでしょう。

 今回は先にハマスイスラエル領に入ってきたのですから、当然報復の侵攻はあるでしょう。で、ネタニアフ首相は「ガザの一般市民は速やかにガザの外に出るよう」促しています。われわれが相手にするのはハマスの指導部だけで一般市民を巻き添えにしないという意思表示です。ただ、同地区は外に出られる回廊がない。昔はエジプトとの間にトンネルがあったのですが、今はどうなっているのか。エジプトの協力がなければ住民の脱出は無理でしょう。

 国土への侵攻や市民の連れ去りなど、これだけ大規模にハマスにやられたら、イスラエルは黙っていない。ネタニアフが「戦争状態だ」と言っているのであれば、ガザ地区を完全占領してしまうかも知れません。ハマスの頼みは大国ロシアや中国なんでしょうが、悲しいことにロシアは自分の戦争に忙しいし、中国は国内の政争、経済悪化を抱えている。レバノン南部のイスラエル国境地帯を支配するシーア派系のヒズボラハマスに呼応してイスラエルに攻撃を仕掛けていますが、彼らだけの支援では不十分。たとえヒズボラの後ろにいるイランが支援してもイスラエルには勝てないでしょう。

 今、世界はかつてのアラファト議長時代のようなパレスチナ支持という気運が薄れています。その上、今回、ハマスが先に手を出したのですから、国際的なハマス支援は生まれにくいでしょう。という意味で冷静に考えれば、「ハマスはなぜ今、この時期に手を出したのか」という疑問が消えません。

 上の写真2枚は、宗谷岬付近で咲いていたハマナスとその実。下の方は、稚内市内の北防波堤ドーム付近で咲いていたハマナス。「ハマス」は攻撃的だけど、「ハマナス」は可愛い花を咲かせます。