つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

えっ!?「ウクライナ支援は戦争激化になる」

 仲代達矢という役者がいます。戦後の映画界を代表する名優ですが、すでに御年89歳とか。彼は8月12日、役者人生70年の区切りを記念して日本記者クラブで記者会見しました。この中で異なことをおっしゃていたので、敢えて取り上げたいと思います。それは、「ウクライナを助けることは戦争激化になる」「私は絶対戦争反対を言いながら死んでいきます」との発言。戦中派で戦争の悲惨さを知り抜いている彼からすれば、率直な感想なのかも知れませんが、小生は「それは違うだろう。くそも味噌も一緒にしては困る」と思いました。

 同じようなセリフが終戦特集のある番組でも見られました。日本の小学生がウクライナから逃げてきた避難民の子供に対し、「ウクライナに武器供与すれば、戦争がずっと続いてしまう。だから反対だ」というような趣旨のことを言っていました。この2人の発言で感じたのは、仲代さんは、戦争に侵略戦争と防衛戦争の違いがあることを分かっていないか、または知りながら意図的に無視しているかだ。終戦特集の小学生は、何でもいいから戦争状態は止めて欲しいという「無条件平和主義」の考え方。これは左翼教師による学校教育の結果か。小生に言わせれば、非常に危険な考え方だと思います。

 終戦特集の小学生の発言は、案の定ウクライナの子供に「祖国を守ることは必要だ」と反論されていました。ウクライナ人にとっては、今現実的に、他国から軍事侵攻されて国土、住民が蹂躙されているのです。もし、仲代発言のままでいけば、他国から攻められても抵抗するな、家財を奪われても、男は殺され、女性はレイプされてもいい、黙って侵略者に従っていれば良いということになりませんか。それでは独立国としてはあまりにも切ない、情けない。自らの自由や制度が奪われるくらいなら侵略者に抵抗する、たとい国民の数パーセントが犠牲になっても戦い抜くという気概がなくてどうするのか。

 また、自由と民主主義を標榜する西側先進国は、同じ価値観を持つウクライナを助けなくてどうする。仲代さんみたいに「支援で戦争は激化する」「戦争は絶対嫌だ」論はウクライナなんてどうなっても良いという考え方につながる。「欧州はロシアの天然ガスが欲しいのだから、ウクライナは早くロシアに領土の一部を割譲し、停戦しろ」とでも言うのか。世界のどこかで他国を力ずくで奪いに来る国があっても、我が国とは関係ないから敢えて無視するということか。だとしたら、非常に危険な考え方です。かつてナチスドイツや日本軍が同じように外国の領土を奪いにいって大戦争になりました。小さな妥協、譲歩は大きな災いを呼ぶのです。

 ロシアは、グルジアジョージア)のアブハジア共和国など領土の一部を奪った後、クリミヤ半島を占拠し、住民投票なる偽善行動をもって「領土化」しました。現状変更を図ろうとする国の領土拡張要求は際限がないのです。ロシアがウクライナの領土の一部を奪い、それを国際社会が認知したら、プーチンの野望はそれで終わらない。次はバルト3国、さらにはモルドヴァフィンランドポーランドへも食指を動かすでしょう。だから、バルト3国、フィンランドは「明日は我が身」という感覚でウクライナの戦争をとらえています。

 不幸なことに我が国もロシアの隣国です。最近、ロシアの将軍が「北海道はロシアの領土なんだ」みたいなことを言っていました。多くの日本人は冗談だと認識したのでしょうが、ウクライナへの侵攻を見ると、あながち冗談と思えなくなりました。侵略国の欲望は際限がないということをもう一度われわれは肝に銘じるべきです。ですから、ウクライナの現実は決して対岸の火事ではないのです。そんな時、仲代さんの言のように「日本を助けることは戦争激化になる」と同盟国米国や西側友好国から言われたとしたら、われわれはどんなに切ないか。よく考えてみる必要があります。

 上の写真は、横浜みなとみらい地区の風景。壁にモナ・リザをアレンジした絵も。