つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

琴の若の大関昇進がせめてもの救いだった

 NHKのBSテレビで「どすこい研」「球辞苑」という番組があります。小生は出色の番組だといつもながら感心して見ています。ご存じない方に一応説明しておきますが、どすこい研は大相撲の決まり手や仕事、球辞苑はプロ野球ゲームの作戦、ポジションなどの一つひとつを取り上げてデータで分析するものです。例えば、相撲の決まり手である「上手投げ」や「肩透かし」は場所の何日目に多く出るかとか、行司や呼び出しにはどういう役割があるのかとか。

 野球では、「フォークボール」はどういうカウントの時に投げるのか、盗塁はバッターのどのカウントの時が多いのかなど。番組は、視聴者が普段気にかけていないことを過去のデータを分析して教えてくれるのです。感覚でなく、データで教えてくれれば説得力があります。プロ野球の選手はよく見ているそうで、プロでもアマチュアでも参考になることが多いと思います。こういうデータ中心主義の番組はデータ集めと分析に時間がかかるし、スタッフには大変な作業量だと思います。まずもって、こまめに調べていることに敬意を表したい。

 これらに比べて民放地上波のゴールデンタイムは、なんだかあまり売れていない漫才師2人組らが登場し、椅子に座ってわいわい賑やかしをしているだけの番組が多い。楽屋内だけで受けるようなネタを延々とやり、互いに仲間のつまらぬ笑いを引き立たせようと手をたたいて喜ぶ陳腐な光景にはあきれるばかりです。安上りに作っているなと思うし、もっと洗練されて、驚くような番組が欲しいなとも思います。

 データ分析からスポーツを見る方法は新鮮だし、実に面白い。できれば、野球、相撲以外の人気スポーツでもやって欲しい。サッカーなんてファンが多いのですから当然あってもいい。コーナーキックからゴールできる確率はどのくらいあるのかとか、セットプレーからの直接ゴールは何パーセントかとか、PK戦でゴールのどこを狙ったら入りやすいかとか、興味あるネタは数え切れません。ラグビーだってルールが分かりにくいだけに、もっともっとルールが分かりやすくなる番組を作って欲しい。

 それはともかく、大相撲初場所が終わったので一応コメントしておきます。残念ながら、今場所も”モンゴル大相撲”になってしまいました。横綱は休んでも地位が落ちないという特権を利用して照の富士はしばらく休み、体調を戻して出てきて優勝しました。番付上位であり、最後まで優勝争いをした4人のうち3人がモンゴル人関取というのもどうも気に入りません。日本人が弱いからしょうがないと言えばそれまでですが、やはり日本の国技なのですから、日本人同士で争って欲しい。

 特権の話のついでに書けば、大関・豊昇龍は13日目に2敗の相星で霧島に当たり、負けた後翌日に休場しました。それで、14日、千秋楽は横綱大関の戦いが完全に組まれない事態になって、面白みが半減しました。豊昇龍はすでに勝ち越しているので、来場所にカド番になることはない。という権利を最大限に利用して休養に入ったということでしょうか。そんなことが許されるのなら、大関はだれでも、勝ち越したものの優勝の芽がないと分かったらすぐ休場すれば良いということになってしまいます。悪しき先例になりませんか。

 大相撲の解説者がしばしば話していますが、15日間、マジに取り組みを続けるとしたら大変な運動量、疲労感も尋常でないでしょう。元白鵬宮城野親方は中継の中で、「10日目ごろが一番疲れて苦しい」と言っていました。でしょうね。「一日一番なんだからそれほどでもないんでは」と考える人は多いと思いますが、やはり真剣勝負が15日間続くのは大変なことだと思います。例えば、四つに組んでまわしを1分以上取り合っていれば、手や腕はぱんぱんになります。それで翌日も同じ運動をしなければならないとなれば、その疲れは半端ないでしょう。

 昔は1場所8日間、10日間だったので、それほどの負担はなかったと思います。でも興行重視で場所は延ばされていきました。小生は、15日間やるのなら、最初に8日間取ったあと1週間の休みを与え、2週間後に後半戦をしたらどうか、あるいは、3日間取ったあと、一日の休みを間に入れるというような日程でもいいのかも知れません。そういう提案をしたいのですが、頑な相撲界で改革は無理なんでしょうね。一つ言えることは、適度な休養を与えないで、疲労を蓄積させると関取の体はボロボロになってしまい、現役生活の寿命は短くなります。

 今回のモンゴル人中心大相撲の中で、まあまあ気休めになったのは琴の若が13勝して直前3場所33勝をクリアし、大関昇進を確実にしたこと。本当は優勝決定戦で照の富士を破って、両手に華の昇進をして欲しかったけど、それは実力だからしょうがないんでしょう。まあ、日本人でも大の里、伯桜鵬などの有望な若手が出てきているので、近い将来、日本人同士が争う展開に期待したいと思います。

 上の写真は、台北市・中山北路で日本統治時代からあるという有名レストラン「満楽門」。下の方は龍山寺近く華西街の観光ストリート入り口。華西街は小生の台北における定点観測地点、行くたびに変化をチェックします。

戦争屋フーシの跋扈で「大航海時代」に戻るのか

 航空機の時代とはいえ、国際的にモノのやり取りをするのは現在でも海運でありましょう。その船舶輸送が危機的状況に陥っています。というのは、太平洋と大西洋を結ぶ中米のパナマ運河が水不足で大型船が通りにくくなっているのと、欧州とアジアを結ぶシーラインとして欧州各国が一番頼りにしているスエズ運河が海賊とイスラム武装勢力によって危険な状態に置かれているからです。マレーシア、インドネシア間のマラッカ海峡もそうですが、昔からここしか通れないと船が集中するところは海賊が出やすいところなのですが…。

 欧州とアジアを行き来する船舶は今、インド洋のアデン湾、紅海、スエズ運河から地中海に抜ける通航を避け、遠く南アフリカ喜望峰を回っているとのことです。「えー」とばかりに小生も驚きました。昔の欧州人が近道のシーレーンとして一番欲したのがスエズ運河。このため、まだ建設機材も十分ない19世紀に完成させたのです。その運河が21世紀になって使えなくなるとはどういうことか。15世紀後の大航海時代に戻れということか。紅海沿岸にある砂漠の国イエメン、そこで暗躍する「フーシ」というイスラムシーア派武装勢力海上に出て海賊ばりの活動をしているのが原因です。

 フーシというのは根っからの戦争屋、戦いでメシを食っている連中です。ほとんどの方はご存じないかと思われますが、イスラエルハマス戦争が起きる前にはスンニ派大本山サウジアラビアにミサイルを撃ち込んで敵対していました。ところがイスラエルハマス戦争が始まるとイスラム宗派間の争いを止め、本来は敵対すべきスンニ派ハマス支援に回り、これを助けるという名目で紅海を通る西側船舶を攻撃し始めました。

 表面的な名目はどうにでもなるということか。要は、攻撃されたくなかったら、「保証金」「身代金」を払えということです。フーシは恐らく裏で船舶会社に対し、紅海の安全通行料を要求しているはずです。アデン湾ではかつてアフリカ・ソマリアの海賊が航行中の船舶を武力で制圧、拉致し、船員、貨物を”質”にして船主に金をせびっていました。フーシは表面的には政治的な目的を掲げていますが、要は金が欲しいのではないでしょうか。ソマリアの海賊と本質は変わりません。

 もともとサウジへのミサイル攻撃の目的も同国の石油生産に影響を与えるためだと見られていました。表は宗派対立のような印象を与えていますが、裏では原油の価格が下がらないよう恐らく他の石油産出国からの依頼を受けたものでしょう。実はフーシに武器を与え、助けているのがシーア派大本山イランです。イランも石油産出国。という意味では、サウジへの攻撃にはイランも関わっていたと見ても不思議でない。イランの武装勢力「革命防衛隊」はペルシャ湾でタンカーなどを臨検しており、フーシと同じようなことをしています。この国も半ば海賊国家なんでしょうか。

 それはともかく、紅海、スエズ運河が使いにくくなったことで、欧州-アジア間の船賃、保険料が急騰しています。なんとも嫌な時代になったものです。フーシをのさばらせておくとガザの戦争が終わっても脅威はなくならないでしょう。米英軍がフーシの拠点を爆撃しているようですが、もともと砂漠のゲリラ勢力ですから、逃げるのはたやすい。暖簾に腕押しの感じ。しかも陰でイランが支援しているのでしたら、武器調達は無尽蔵です。

 ソマリアの海賊はたんなる物盗りで、あまり宗教、政治的なバックがなかったようです。日本を含め西側各国、さらには中国も周辺国のジブチに基地を置き、警戒に当たっており、最近ではソマリア海賊の跋扈はなくなった感じです。ですが、フーシの紅海での船舶攻撃は一応ガザのイスラム支援を名目にしているので、大国イランのほか、全世界のイスラム諸国が同調的であり、なかなか止みそうにありません。困ったものです。フーシのためにスエズ運河は使えず、しばらくは大航海時代に戻ってしまうのでしょうか。

 上の写真は台北・南京西路にある北京ダック名店での光景。ここの店の甘いたれは北京の有名店と変わりないほどの美味。久しぶりに烤鸭(ダック)を堪能しました。

裏金問題から、即「派閥悪論」はおかしい

 自民党の派閥が開くパーティーで裏金が生じ、一部の議員がそれを私のものとしていたことが問題になりました。裏金の私服化は確かに政治資金規正法に触れる罪ですから言外。だからと言って検察当局が派閥の存在まで問題視しているとは思われません。ですから、岸田首相が派閥自体を止めてしまうという結論に達したのは過剰な反応で、無茶苦茶です。なんであんなに短絡的、馬鹿単純なんでしょうか。派閥がなくなれば政治と金の問題がなくなるわけでないし、利権の構造がなくなってしまうわけではないのです。

 3人寄れば、取りあえず2対1に分かれるように、人間が多数集まれば、必ずグループが生まれます。政党という枠組みがあれば、それで十分ではないかという人もいるでしょうが、それでは不十分。国会議員400人近くを抱えている自民党であれば、微妙に主張する政策も違うであろうし、同じ意見を持った議員が政党全体の方針になるよう徒党を組んで圧力をかけなければなりません。政策実現には議員の多数が必要。それにはその意見集約を図るための政策集団が必要です。

 岸田氏はなんで派閥即悪と考えるのでしょうか。どうして派閥の資金パーティー裏金問題から派閥の悪論、解消論に発展するのか。直接関係ないんじゃないのと思います。派閥というのは一定の政策で意見集約を図るほか、国会議員としての人材育成、議員間の情報交換、選挙協力とさまざまな面でメリットがあるように思います。われわれから見ると、逆に派閥があるためのデメリットって何かと聞きたくなるほどです。

 確かに、首相からすれば、組閣するときに、各派閥のリーダーから「この人をぜひ入れてくれ」などと圧力がかかることはうっとうしいと思います。本当は専門的な知識を持ち、政策に通じた有能な議員だけで組閣するのがいいのかも知れません。でも、それだと一定の人間が長く一定のポストに就くことはなってしまう恐れがあります。長期の権力は必ず腐敗を生むという格言からすれば、そういう事態は感心しません。役所のトップは適当に交代があって然るべきで、その順番を付けるのが派閥のリーダーだと思います。

 昔の中選挙区制度の下では、自民党は各選挙区に派閥が独自候補を立て、それで党内候補同士で切磋琢磨してきました。つまり党内党の争い。これが自民党を活性化させてきました。派閥は次期リーダーとなるべき人がトップに座り、議員数を増やすことで政権を近づけてきました。小生はそういう中選挙区制の方がいいと思いますが、現行制度の下ではそれはかなわない。

 ただ、一つ言えることは、派閥を持たなかった菅義偉氏が結局短命で終わったのは、周囲に熱心に支えようとする人がいなかったからだと思います。そういう意味で、派閥は政策集団というより騎馬戦の上に乗った人を支える人たちかも知れません。世間の評価では石破茂という議員が大きな人気を得ていますが、国会内では彼を支えようとする動きはない。石破派はすでに解消されているのです。その意味では、今でも派閥の力学は有効に作用されていると思います。

 岸田、二階、安倍派が派閥解消を決めたとか。それは当たり前です。岸田派(宏池会)は岸田のあと当面首相になり得る人がいない。ナンバー2の林芳正氏(官房長官)は保守派から嫌われています。派閥力学的に言っても岸田のあとにまた岸田派からは選ばれないでしょう。二階は自身が老齢でもう政界に野心はないし、同派にも次期トップをうかがう人材はいない。武田元総務相が二階のあとを引き継ぐのでしょうが、世間的に知られていない。

 安倍派は5人の幹部が並立の実力であり、所詮呉越同舟で方向性が定まらない。5人衆にとって、特にトップに野心を持つ人、萩生田、西村氏などは心底では自分中心の新派閥を作るためにもいったん今の派閥を壊した方がいいと思っていることでしょう。現時点では、岸田が安倍氏亡き後も数の面で安倍派を頼りにしているから、5人衆は同一派閥を続けているのであって、岸田が首相を辞したら、バラバラになる運命です。

 茂木派が派閥解消に否定的なのは、茂木自身が次期トップになるべく野心を持っているからです。麻生派も麻生自身にまだ権力中枢への色気があるほかに、派内に河野太郎という次期トップを狙う人材も抱えているのでまだ派閥の必要性を感じていることでしょう。小生思うに、何も他派閥が解散するからといって横並びになる必要はない。正々堂々と派閥活動を進めていって欲しいと思います。その方が自民党、日本の政界にとってハッピーです。

 上の写真は、台北駅をバックにした一枚。 

民進党造勢大会見て「人間パンのみで…」を感じる

 総統選取材のため、5日間ほど台湾を訪問していました。で、各党の支持者が気勢を上げる造勢大会を見たし、いろいろな方にもお会いして台湾の政局、中台関係などについてさまざまな見解を聞きました。それにつけても自由と民主主義っていいなあとしみじみ思います。大陸中国では、共産党の幹部にはとても近づけないし、今ではメディアの関係者に対してもインタビューなどできないでしょう。反スパイ法がありますから。暗黒の秘密主義の国、「保密」の巨塔の中で陰謀をめぐらす共産党というイメージは拭えないのです。

 今次総統選の投票率は71・86%とのこと。日本では、政権選択で比較的関心の高い衆院選ですら50%前後で6割などはとても行かない。ましてや県、市町村の地方議会レベルでは3割程度の投票率です。まあ、政治に関心がないというのは、そこそこ現状の政治に満足している、別に変える必要もないとの判断が多くの選挙民にあるからでしょう。その点、台湾選挙民は今でもずっと大陸の軍事的、経済的圧力を受けています。大陸の習近平政権に対してどういう意思を持つのかを投票行動で明確に示したいということで投票所に足を運ぶのだと思います。

 与党民進党、野党国民党の双方の造勢大会を見てきました。投票2日前に総統府前広場で行われた民進党の集会は度肝を抜かれるくらいの大勢の人が集まりました。15万人以上いたでしょうか。同行の記者OBの仲間と語らい、なるべく演台の近くまで行きたいと思って群衆をかき分けたのですが、無理。とても先に進めない。小生などは密集具合を見て、ついつい2年前のハロウィーン時に起きた韓国ソウルの梨泰院の圧死事故を思い出し、怖くなってしまいました。その時、大会の演台ではなんてことはない、若者グループが踊りと歌のパフォーマンスをしていただけなんですが…。

 印象で言えることは、集会では大陸への激しい嫌悪感、大陸とつるむ国民党への反感が充満していました。直前に「習近平主席を信じなければならない」などと発言した国民党の馬英九前総統に対しては強い反発が示されたのです。「馬英九よ、大陸に嫁に行け」の文字が書かれた横断幕を持った人もいました。民進党支持者は、経済的なつながりで大陸から恩恵を得ることより、一国二制度などで深い関係になったら、台湾の自由と民主主義が危機的状況に陥るという政治的、社会的な視点を重視したのでしょう。

 確かに、「人間、パンのみにて生きるにあらず」という聖書の言葉があります。パン(食物)以上に精神的なことを重んじる意味は大きい。自由な思考、発想を失うことは人間としての尊厳どころか存在すら失うことになってしまいますから。それが、絶えず食物を求め続け、その他は生殖本能しか持たない人間以外の動物との違いでしょう。われわれ日本人は少なくとも思いを自由に表現できる社会がある。そして、台湾人も同じようにそれを享受し、喜んでいる社会を共有している。それを感じられただけでも造勢大会を見る価値がありました。

 残念ながら、大陸中国の政権、いや独裁政権の一般的な傾向として、社会に自由な空気などありません。住民にはそこそこメシを食わせておけばそれでよい、お上が何をやるかなどに関心を持つべきでないとの考えがあるからのようです。ですから、政権をチェックするメディアは発達しません。メディアはむしろ敵だと認識していましょう。メディアの監視がない独裁政権はやがて侵略戦争に突き進む流れになります。それは、プーチン・ロシアの例を見れば歴然です。 

 馬前総統が「習近平主席を信じなければならない」と言うのでしたら、われわれは台湾侵攻がないことを信じていいのか。ただ、台湾で小生が会った多くの学者、アナリストはこの馬前総統発言は選挙戦に大きなマイナス効果を与えたと言っています。という観点からすれば、台湾人のほぼ100%は習近平を信用していないということになりましょう。「信じる者は救われる」という聖書の言葉がありますが、むしろ世間一般では「信じる者は足を掬われる」ことの方が多い。同じ「すくわれる」ですが、えらい違い。亡くなった小生の親友がよく冗談で言っていましたが、中台関係についてはそれが当たっているようです。

 上の写真は、小生自宅近くの野毛山公園の池に飛来するサギ。鳥のサギは素晴らしいが、政治家の詐欺はいやだ。

アナリストは頼清徳勝利より戦後の状況に関心

  11日から台湾総統選見学のために台北を訪問しています。香港駐在時代は2か月に一回の割で台湾を取材に訪れていましたし、退職してからも4年ごとの総統選を見に来ました。蔡英文総統2期目の是非を求めた2020年の総統選にも来ています。という意味では勝手知ったる都市なのですが、やはり4年経つとかなり街の様子が変わっているので驚きます。1990年代は全体に田舎臭い感じがしたのですが、今では都市整備がされているし、台北を見る限り、もう立派な近代”国家”という印象です。

 総統選の結果は大方がご存じなので触れません。台湾人らへの事前の取材で、多くの人は民進党の頼清徳候補が国民党の侯友宜候補に対し80万票引き離したら大勝利と見ていたのですが、結果は90万票以上の差となりました。地元の統一派新聞「聯合報」などは”僅差の勝利”などと大陸にごまをすったような書き方をしていましたが、これは穿った見方。やはり3党候補が出て40%以上の得票率であれば大勝利に間違いないでしょう。

 勝利の理由はさまざまに報じられていましたが、国民党の大御所、馬英九元総統が選挙近くなって「習近平氏を信頼している」などと大陸寄りの発言をしたことが大きな要因だと言われています。事前取材した多く方もそれを強く指摘していました。この発言だけで20-30万票の減票になるのではないかとの見方も。大陸が怖いと言っても、中共にすり寄る政党はやはり台湾人に嫌われます。馬先生は状況の読めない、実にばかな発言をしたものです。

 中国は民進党の頼候補を「根っからの独立派」だとしてさまざまな手を使って引き落としの選挙干渉に入りました。選挙がない国が台湾の選挙に異常な関心を示すというのはある意味滑稽な構図です。まず台湾の通信網に打撃を与えるような気球を飛ばしたこと、さまざまな発言で圧力をかけたこと、さらには両岸の事実上の自由貿易の枠組みであるECFAの制限を示唆したこと。あの手この手で野党の国民党を引き立てようとしたのですが、自由を謳歌している台湾人はそんなことにめげませんでした。若者を中心に台湾人は中共の圧力にしっかりノーを突き付けたのでした。

 投票前夜に民進党と国民党の「造勢大会(活入れ集会)」を見てきました。民進党は若者が多く、しかも個人が自分の意思で来ている感じですが、国民党の方は旗を持ち、体にゼッケンを巻いた集団がほとんど。集会の外にはバスも待機しており、参加者は地方から動員された様子が感じられました。こんな風景を見る限り、やはり投票日前から民進党の勝利は動かないなと小生ですら思いました。

 ですから、事前の取材で会った人は、総統選の勝利者がどちらかという話題を出さず、立法院議員選挙の構成比はどうなるか、ねじれ国会になったら頼総統の下でだれが行政院長(首相)になるのか、だれが立法院長(国会議長)になるのか、民衆党は藍に付くのか、緑に付くのかという関心ばかりでした。もちろん、中台関係も大きな話題ですが、これは「現状維持」という蔡英文総統の路線を引き継ぐのでしょうから、今とそれほど大きく変わることはないと思われます。

 問題は一つ。中国がさらに台湾への軍事的圧力のみならず、経済的な圧力を強めることでしょう。ECFAの制限はどこまで行くのか。前にも中国は台湾のパイナップルの輸入に制限をかける嫌がらせをしました。パイナップルは民進党の地盤である台湾南部が産地なので、その産地住民を重点的に圧力をかけたのです。ですから、中国は今後、民進党の支持団体、企業はどこかなどと事細かく分析し、ワンポイントで攻撃を仕掛けてくるように思われます。圧力は実を結ばないというイソップ物語の「北風と太陽」の寓話が分からない国家は悲しいものです。

 上の写真は、台湾総統選2日前に総統府前で行われた民進党造勢大会の様子。下の方は南京西路の新光三越デパート下にある名店「鼎泰豊」の小籠包製造風景。一個いっこ手作りなのがすごい。うまいから、1時間以上並ばないと入れないレストラン。

メジャーに日本人だけのチームを作ったら

 今は真冬、スポーツニュースと言えば、年始の駅伝に続いて高校、大学などのラグビー、サッカーがあるのですが、所詮はアマチュアの世界。プロスポーツとしては、14日から大相撲が始まり、2月になれば、プロ野球のキャンプ情報も出てくるし、サッカー、ゴルフも始まるのですが、そこまではもう少し時間が必要です。ですから、1月前半がライブで見られるプロスポーツが一番少ない時でしょう。テレビのスポーツニュースを見ても、新聞のスポーツ面を見ても何か生き生きとした感じが見られません。

 大谷翔平は顔もいい、身長が高くスタイルもいい、笑顔もいい、生きざまもいい、その上、人間の優しさを醸し出しているので、見ていて気持ちがいい。ですが、メジャー野球がないから昨今のスポーツニュースに出てきません。やはりユニフォーム姿の大谷が出ないニュースは画竜点睛を欠く。能登地震被災者に何億円かの寄付をしたらしいのですが、これも彼なら当然予想された行動であり、驚くに当たらない。素晴らしい人間というのは素晴らしい行動をしても「ニュース」にはならないというのはおかしな反応、現象であるのかも知れません。

 大谷の話に触れれば、小生を含めて多くの高齢者は昨年当たりまでヒマを見つけてはNHKの衛星放送でエンジェルス戦を見ていたと思います。ですから、大谷に限らず、トラウトだ、レンドーンだ、サンドバルだといったように同チームの他の選手の名と恰好まで覚えてしまいました。それが今年はドジャーズ移籍ですし、山本由伸も加わったのですから、NHKの放送もドジャーズ中心になるでしょう。本当に公式戦が始まる3月が待ち遠しい。エンジェルスはもう過去のことで、われわれは今度はドジャーズの選手をしっかり頭に刻むことになりましょう。

 サンディエゴパドレスには楽天から松井祐樹が加わり、ダルビッシュ有と日本人投手の二枚看板がそろいました。シカゴカブスはニューヨークヤンキース、ボストンレッドソックスロサンジェルスドジャーズと並ぶ名門チームですが、ここには鈴木誠也に加えて今年から横浜の今永昇太が加わります。なんだか昨年のWBCに出場した選手の多くがメジャーに来るようで、楽しみが増えますが、その分、日本のプロ野球が下火になってしまうのではないかと若干心配になります。

 これだけ日本選手がメジャーリーグにいくのなら、いっそのことハワイのホノルルか米、カナダの西海岸の都市をフランチャイズにして日本選手だけのチームをメジャーに作ったらどうかとさえ思ってしまいます。カナダのメジャーには菊池雄星がいるトロントブルージェイスがあるのですから、もう一チームくらいあってもいい。トロントは東寄りですから、シアトルに近い西海岸のバンクーバー辺りをベースにしたらどうでしょうか。カナダのメジャーファンももっと増えるのではないかと思います。

 あるいはメキシコもWBCで日本相手に実力を見せつけたのですから、ここにもメジャーが一チームくらいあっても良い。バンクーバーには日本とカナダ出身選手の連合軍、メキシコでは日本、中南米の連合チームにしたら面白いと思います。その分、メジャーのチームが増えて困るというのなら、中西部の都市や複数チームが存在するテキサス州ロサンジェルス、ニューヨークのチームを減らしても良いのでは。ロスなどは2チームも要らないと思います。

 こう言っては残酷ですが、大谷のいなくなったエンジェルスはもう魅力ないし、いっそのことドジャーズと合併したらどうでしょうか。これって暴論ですか。

 上の写真は、12月の香港旅行で見かけた飲茶屋の光景。何か昔の賑やかさはありませんでした。

統一が歴史的必然なら、黙って見てればいい

 習近平国家主席は「台湾の統一は歴史的な必然」とか言って、何が何でも自らが政権に就いている時に”統一”を果たしたい意向のようです。そのためには武力を使ってもいい、戦争によって台湾が破壊されてもいい、台湾人が死んでもいいとの感覚をお持ちのようです。でも、しみじみ考えるに、台湾人を同胞とみなすなら、彼らを殺してでも土地を奪いたい、台湾人民を自らの施政の下に置きたいというのは異常な発想だと思います。台湾人のほとんどが今の大陸共産党政権を嫌っており、それを無視して統一するのは男女間のレイプに等しい行動かと思います。

 このブログで何度も取り上げていますが、イソップ物語の「北風と太陽」の寓話にあるように、強権力を使って統一しても、良い結果は生まれないし、虚しいものになるでしょう。すでに民主主義の良さを知っている台湾人民の中で、今さら共産党施政を歓迎する、同政権下に入ってもいいと思う人はごく少数でしょう。香港の例を見れば分かる通り、北京当局の支配が強まれば強まるほど人民の反発が強まり、自由度は奪われ、この地域を去っていく人が増えましょう。

 経済は自由の中でしか繁栄しません。社会主義の管理社会の中では発展はありません。共産党の影響力が強まった香港では今、経済力が衰え、不動産物件の値段が下がり、貿易量も減っています。一国二制度は有名無実化しています。もともと金融都市、自由貿易経由地として存在した香港が自由放任(レッセフェール)というバックグラウンドをなくせば、残念ながらそのレーゾンデートルは失われていくでしょう。大陸で見られるように、当局の過度の介入があれば、香港であれ、台湾であれ、角を矯めて牛を殺すの状況になってしまいます。

 大陸の指導層の多くもそのくらいのことは分かっているはずです。それでも習自身は、経済を犠牲にしてでも台湾を施政下に置きたいと考えている。それは、やはり個人的な野心からの政治上の狙いがあるからではないか。中国を世界一流の覇権国家にしたい、そのためには海洋への進出を果たす、とりわけ太平洋、インド洋への進出、軍事的なプレゼンスを図るという思いが習にはあるのです。いわゆる「中国の夢」の実現です。その最終目標達成に向けて太平洋に面した台湾の奪取というのは絶対必要。つまり、台湾という地面が欲しいだけなんです。この地域の繁栄、台湾人民の幸福などは微塵も考えていないということでしょうか。

 穿った見方をすれば、経済的にも台湾征服にはメリットが大きいとの思惑もありそう。台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は世界的な半導体大手であり、いまだ時代後れの半導体しか造れない大陸にしてみれば、のどから手が出るほど欲しい企業。台湾を征服すれば、こうした企業もすんなり支配下におけると考えているのでしょう。でも、この考えは甘い。TSMCの企業トップは外省人(大陸系)でありながらも、すでに米アリゾナ州に最新鋭半導体工場の建設を進めるなど米国寄りになっています。

 民進党蔡英文現総統も今回総統選に出る頼清徳候補も「独立はしない、現状維持でいい」と言っています。それなのに習は何故事を荒げるのか。太陽よろしく暖かく台湾を見守れば、包み込めば、勢い台湾人民は同じ血を感じて大陸にすり寄ってくるはずです。ビジネスマンもこの大市場を無視できないはずです。武力で統一すると脅して何のプラスがあるのでしょう。「統一が歴史的必然」とするなら、時が解決するということであり、おとなしく見守っていればいいだけの話ではないですか。

 上の写真も、昨年暮れ、関内の横浜公園内で見た紅葉風景。