つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

戦争屋フーシの跋扈で「大航海時代」に戻るのか

 航空機の時代とはいえ、国際的にモノのやり取りをするのは現在でも海運でありましょう。その船舶輸送が危機的状況に陥っています。というのは、太平洋と大西洋を結ぶ中米のパナマ運河が水不足で大型船が通りにくくなっているのと、欧州とアジアを結ぶシーラインとして欧州各国が一番頼りにしているスエズ運河が海賊とイスラム武装勢力によって危険な状態に置かれているからです。マレーシア、インドネシア間のマラッカ海峡もそうですが、昔からここしか通れないと船が集中するところは海賊が出やすいところなのですが…。

 欧州とアジアを行き来する船舶は今、インド洋のアデン湾、紅海、スエズ運河から地中海に抜ける通航を避け、遠く南アフリカ喜望峰を回っているとのことです。「えー」とばかりに小生も驚きました。昔の欧州人が近道のシーレーンとして一番欲したのがスエズ運河。このため、まだ建設機材も十分ない19世紀に完成させたのです。その運河が21世紀になって使えなくなるとはどういうことか。15世紀後の大航海時代に戻れということか。紅海沿岸にある砂漠の国イエメン、そこで暗躍する「フーシ」というイスラムシーア派武装勢力海上に出て海賊ばりの活動をしているのが原因です。

 フーシというのは根っからの戦争屋、戦いでメシを食っている連中です。ほとんどの方はご存じないかと思われますが、イスラエルハマス戦争が起きる前にはスンニ派大本山サウジアラビアにミサイルを撃ち込んで敵対していました。ところがイスラエルハマス戦争が始まるとイスラム宗派間の争いを止め、本来は敵対すべきスンニ派ハマス支援に回り、これを助けるという名目で紅海を通る西側船舶を攻撃し始めました。

 表面的な名目はどうにでもなるということか。要は、攻撃されたくなかったら、「保証金」「身代金」を払えということです。フーシは恐らく裏で船舶会社に対し、紅海の安全通行料を要求しているはずです。アデン湾ではかつてアフリカ・ソマリアの海賊が航行中の船舶を武力で制圧、拉致し、船員、貨物を”質”にして船主に金をせびっていました。フーシは表面的には政治的な目的を掲げていますが、要は金が欲しいのではないでしょうか。ソマリアの海賊と本質は変わりません。

 もともとサウジへのミサイル攻撃の目的も同国の石油生産に影響を与えるためだと見られていました。表は宗派対立のような印象を与えていますが、裏では原油の価格が下がらないよう恐らく他の石油産出国からの依頼を受けたものでしょう。実はフーシに武器を与え、助けているのがシーア派大本山イランです。イランも石油産出国。という意味では、サウジへの攻撃にはイランも関わっていたと見ても不思議でない。イランの武装勢力「革命防衛隊」はペルシャ湾でタンカーなどを臨検しており、フーシと同じようなことをしています。この国も半ば海賊国家なんでしょうか。

 それはともかく、紅海、スエズ運河が使いにくくなったことで、欧州-アジア間の船賃、保険料が急騰しています。なんとも嫌な時代になったものです。フーシをのさばらせておくとガザの戦争が終わっても脅威はなくならないでしょう。米英軍がフーシの拠点を爆撃しているようですが、もともと砂漠のゲリラ勢力ですから、逃げるのはたやすい。暖簾に腕押しの感じ。しかも陰でイランが支援しているのでしたら、武器調達は無尽蔵です。

 ソマリアの海賊はたんなる物盗りで、あまり宗教、政治的なバックがなかったようです。日本を含め西側各国、さらには中国も周辺国のジブチに基地を置き、警戒に当たっており、最近ではソマリア海賊の跋扈はなくなった感じです。ですが、フーシの紅海での船舶攻撃は一応ガザのイスラム支援を名目にしているので、大国イランのほか、全世界のイスラム諸国が同調的であり、なかなか止みそうにありません。困ったものです。フーシのためにスエズ運河は使えず、しばらくは大航海時代に戻ってしまうのでしょうか。

 上の写真は台北・南京西路にある北京ダック名店での光景。ここの店の甘いたれは北京の有名店と変わりないほどの美味。久しぶりに烤鸭(ダック)を堪能しました。