つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

統一が歴史的必然なら、黙って見てればいい

 習近平国家主席は「台湾の統一は歴史的な必然」とか言って、何が何でも自らが政権に就いている時に”統一”を果たしたい意向のようです。そのためには武力を使ってもいい、戦争によって台湾が破壊されてもいい、台湾人が死んでもいいとの感覚をお持ちのようです。でも、しみじみ考えるに、台湾人を同胞とみなすなら、彼らを殺してでも土地を奪いたい、台湾人民を自らの施政の下に置きたいというのは異常な発想だと思います。台湾人のほとんどが今の大陸共産党政権を嫌っており、それを無視して統一するのは男女間のレイプに等しい行動かと思います。

 このブログで何度も取り上げていますが、イソップ物語の「北風と太陽」の寓話にあるように、強権力を使って統一しても、良い結果は生まれないし、虚しいものになるでしょう。すでに民主主義の良さを知っている台湾人民の中で、今さら共産党施政を歓迎する、同政権下に入ってもいいと思う人はごく少数でしょう。香港の例を見れば分かる通り、北京当局の支配が強まれば強まるほど人民の反発が強まり、自由度は奪われ、この地域を去っていく人が増えましょう。

 経済は自由の中でしか繁栄しません。社会主義の管理社会の中では発展はありません。共産党の影響力が強まった香港では今、経済力が衰え、不動産物件の値段が下がり、貿易量も減っています。一国二制度は有名無実化しています。もともと金融都市、自由貿易経由地として存在した香港が自由放任(レッセフェール)というバックグラウンドをなくせば、残念ながらそのレーゾンデートルは失われていくでしょう。大陸で見られるように、当局の過度の介入があれば、香港であれ、台湾であれ、角を矯めて牛を殺すの状況になってしまいます。

 大陸の指導層の多くもそのくらいのことは分かっているはずです。それでも習自身は、経済を犠牲にしてでも台湾を施政下に置きたいと考えている。それは、やはり個人的な野心からの政治上の狙いがあるからではないか。中国を世界一流の覇権国家にしたい、そのためには海洋への進出を果たす、とりわけ太平洋、インド洋への進出、軍事的なプレゼンスを図るという思いが習にはあるのです。いわゆる「中国の夢」の実現です。その最終目標達成に向けて太平洋に面した台湾の奪取というのは絶対必要。つまり、台湾という地面が欲しいだけなんです。この地域の繁栄、台湾人民の幸福などは微塵も考えていないということでしょうか。

 穿った見方をすれば、経済的にも台湾征服にはメリットが大きいとの思惑もありそう。台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は世界的な半導体大手であり、いまだ時代後れの半導体しか造れない大陸にしてみれば、のどから手が出るほど欲しい企業。台湾を征服すれば、こうした企業もすんなり支配下におけると考えているのでしょう。でも、この考えは甘い。TSMCの企業トップは外省人(大陸系)でありながらも、すでに米アリゾナ州に最新鋭半導体工場の建設を進めるなど米国寄りになっています。

 民進党蔡英文現総統も今回総統選に出る頼清徳候補も「独立はしない、現状維持でいい」と言っています。それなのに習は何故事を荒げるのか。太陽よろしく暖かく台湾を見守れば、包み込めば、勢い台湾人民は同じ血を感じて大陸にすり寄ってくるはずです。ビジネスマンもこの大市場を無視できないはずです。武力で統一すると脅して何のプラスがあるのでしょう。「統一が歴史的必然」とするなら、時が解決するということであり、おとなしく見守っていればいいだけの話ではないですか。

 上の写真も、昨年暮れ、関内の横浜公園内で見た紅葉風景。