つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

一人っ子を戦争に行かせる選択肢はない

 中国は今、第19期6中全会を開催して、新たな「歴史決議」を採択、習近平の執政を確立させ、来年の第20回党大会後も権力を握る腹積もりらしいです。独裁体制の国家では、選挙がないので最高権力者の胸一つでどうにでもなる。本来は国家主席は10年までと決まっていたものを2018年の全人代でこの任期制を取っ払ってしまって、いつまでもでできるようにしました。習近平にしろ、プーチンにしろ、ベトナムのグエン・フーチョンにしろ、イランのハメネイにしろ、ついでに志位和夫にしろ、困った連中です。長くやることで権力は必ず腐敗することを理解していないようです。

 で、習近平は今、自分の権威を高めることに汲々としています。経済的には一帯一路で中国主体の経済圏を作り上げ、軍事的には南シナ海支配下に置こうとしているばかりでなく、インドやブータンの領土を奪い、日本の尖閣諸島にもちょっかいをかけてきています。軍事的な攻勢は、自国の大国意識を満足させるという意味では、戦前の日本の大陸進出のように国民には歓迎されるのですが、半面怖い面もある。これは終わりがない野望ですから、世界制覇まで続けられることになる。そうなれば、やがて米国と最終戦争をしなくてはならなくなります。

 とりあえず、今、台湾の制空圏内を中国の戦闘機が侵犯して力の誇示を図っています。でも、こんなことをすれば、世界的には逆効果。米国は今、台湾防衛についての曖昧戦略を放棄して、最新武器を供与したり、軍人を台湾に送って指導したりと露骨に台湾への軍事支援をしています。欧州はこれまで中国の軍事力伸長には目をつぶって、経済的な観点から関係を保持してきましたが、ここへ来て人権問題提起に中国側が露骨に報復したことから一転。チェコリトアニアばかりでなく、英独仏の大国でも台湾寄りになる傾向が強まってきました。

 アフリカ諸国やパキスタンなどの友好国でも、中国人が襲われる事件が相次いでいます。中南米諸国でも中国に懐疑的になりました。これまでふんだんにある金で外国を支援したため、歓迎されていたのですが、最近、それらの国々も中国のやり方に不快感を持つようになりました。一帯一路で各国に中国人や企業を送り込むのはいいのですが、地元の人間の雇用や企業の発展を考えず、中国の利益ばかり図る構図が被支援国でも分かってきたためです。それに、最近の中国経済の落ち込みで、海外支援の金もしぼんできたため、各国が「金の切れ目が縁の切れ目」と思うようになってきたことも背景にあります。

 それはそうと、台湾に対し中国は戦端を開くことがあるのでしょうか。これは、日本にとっても最も重要な課題であり、多方面でその有無、成否について論じられています。今の情勢は一見、中国の台湾進攻がありそうな雰囲気がありますが、小生は否定的です。というのは、毛沢東はかつて「核戦争で中国人の半分死んでも、まだ3億人が残る」と豪語していたのですが、それは重要インフラ等が何もない毛沢東時代だから言えたこと。今はそんな時代じゃない。中国には今、繁栄する都市と豊かな人民の生活があり、それを犠牲にすることは無理です。人民は同意しないでしょう。

 中国の労働世代は1970年代から2000年代にかけて生まれた世代。この中で特に、軍隊の中でも働き盛りは1980年以降生まれの一人っ子時代の人たちです。今豊かになった中国人家庭が一人っ子を戦争に出して死なせる選択肢はないでしょう。為政者が国民を戦争に駆り立てるには、祖国の防衛という要素を除けば、確固たる信念・思想、指導者への忠誠、国民個々の利益が必要ですが、一般国民にとって台湾を攻める理由は何一つ見出せません。

 社会主義共産主義を広めたいというかつての信念はないし、習近平に身をささげるという意識などはさらさらないでしょう。さらに、台湾を攻め獲って民主主義地区を独裁国の一部にしたところで、国民一人ひとりに何の利益ももたらさないどころか、却って”希望の地”を失ってマイナスなだけ。いくら何でも、今、習近平独裁政権下で祖国を統一させたいと強烈に望む人はいない。であれば、中国の若者が積極的に台湾進攻の戦いに参加するとは思えません。

 今、アジアの中国包囲網に与するのは米国だけではない。オーストラリア、インド、日本、さらには欧州の英国、フランス、ドイツが軍艦をアジア海域に送ってきています。これは単にインド洋、南シナ海を守るということだけでなく、台湾防衛も意味していることでしょう。となると、中国が台湾に戦端を開いたら、日米豪印だけでなく、欧州もこの争いに参加することになります。そんなことをする勇気が中国にあるとは思えません。

 上の写真は、滋賀県の旅行中に見た花。下の方は小生の近所で見た花。