つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

経済苦境でも、再建策より毛沢東生誕130年祭か

 中国が今、デフレスパイラルに陥っていることはいろいろなメディアが報じているので、すでに周知の事実でしょう。これまで造ればもうかるということで、何やら建築ラッシュ、建設バブルになってしまい、14億人人口の2倍も3倍もの住宅を造ってしまったのです。それでも不動産値上がりへの期待感は収まらず、金持ちは2軒、3軒と住宅を買っていたので、総体的な需要は止みませんでした。でも、習近平国家主席が「住宅は住むものであって、投機に対象にすべきではない」と厳しく”勅令”を発したことから、2軒、3軒目の住宅は買いにくくなり、結果、だぶついた供給数は捌き切れなくなりました。

 中国の不動産、住宅建築関連の産業はGDPに対し約3割の貢献度があるといいます。ですから、不動産バブルが弾けると、鉄筋鉄骨、セメント、内装、家具などの住宅関連産業は軒並み低迷、それに関わってきた労働者は失業の憂き目に遭いました。それだけでなく、香港、上海、深圳に上場していた不動産関連企業の株価が下落、何十兆元という時価総額が吹き飛んでしまいました。失業しないまでも給与の減額があったり、遅配があったりしては、労働者もたまったものではない。消費意欲は衰えて第3次産業全体までに影響を与えています。

 中国経済のまずさは不動産業だけにとどまらない。習主席はIT産業を目の敵にしています。それは3年ほど前、アリババの馬雲(ジャック・マー)会長が中央政府の経済システムに対する過度な介入に批判的な発言をしたため、中央指導部はこれに激怒、アリババ系の金融企業「アント」の香港、上海市場上場を止めさせる措置を取りました。これ以降、IT企業への監視が厳しくなり、馬会長は中国国内にいられなくなり、2年ほど世界を転々としています。

 中央当局の締め付けはIT産業に加えて、家庭教師、学習塾、補習校などの教育産業、子供向けのゲーム機などの業界に対しても及んだため、第3次産業全体が衰退しました。つい最近(12月下旬)でも、子供がゲーム機で遊ぶ時間は何時間以内などと当局が細かな設定をしたため、ゲーム機を扱うテンセント(騰訊)などアリババと並ぶIT企業の香港上場株価が軒並みダウンしてしまいました。不動産不況に加えて、IT産業いじめが加わり、さらには国際政治的に西側との不調が続くことで、投資は減り、貿易も縮小気味です。これでは中国経済はますます細るばかりです。

 そういうこの時期、中国は12月26日の毛沢東主席生誕130年を記念して北京で集会を開き、習主席は「台湾統一は必ず実現する。いかなる方法であれ、台湾を祖国から分裂させることは断固拒否する」などと発言したそうな。今さら毛礼賛とは時代錯誤もはなはだしいし、第一、経済ファンダメンタルズへの現状認識がなさ過ぎです。この時期に、経済の再建策、景気の浮揚策を打ち出すより、台湾威圧の掛け声を発することの方がそれほど大事なのか。国民の多くを納得させる行動とはとても思えない。

 中国には多くの台湾企業が進出しています。特に、大陸出身(外省人)がオーナーを務める鴻海企業(富士康集団)やTSMC(台湾積体電路製造)も大陸に工場を持つ。台湾威圧の発言はこうした企業やオーナーに圧力を加えることでしょう。習主席はそうしたマイナス効果を真面目に考えたことがあるのだろうか。このブログでもかつて触れましたが、中国では経済的に苦境に陥ると、政変が起きやすい。つまり、経済の苦境は自らの政治生命に関わることなのですが、習氏はそこまで深慮しているのでありましょうか。

 上の写真は、香港・パンダホテルのロビー飾り付け。毛沢東生誕祭よりクリスマスの方が楽しい。