つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

米中は今、「トゥキディデスの罠」状態に

 今回のG7サミットを見ていると、対中国包囲網が本格化しそうな感じがします。バイデン米大統領オバマ政権の副大統領時代、「習近平国家主席と親しい」を売りにしていたほどむしろ中国派と言われていましたが、今は完全に中国に見切りをつけた感じ。反中国はトランプ時代の共和党だけでなく、与党・民主党議員も含めた米国全体の風潮になってしまいました。米国がNATOで一体の集団安全保障体制を取る欧州に中国が経済緊密化を迫ったり、米国の裏庭とも言われる中南米に手を出したりすれば、さすがに共和であろうと、民主であろうと黙ってはいられないのでょう。

 バイデンを怒らせた理由の一つは、大統領就任1カ月前の昨年暮れ、中国がEUに経済投資協定締結を迫り、合意に持ち込んだこと。国際協調派のバイデンが大統領になれば、米欧が再接近し、協定締結は難しくなると考えたのでしょう。欧州側の合意の主役はメルケルやフォンデアライエン(EU委員長)という経済重視のドイツ人でした。他の欧州諸国は、経済のために人権は犠牲にできないという姿勢です。米国側は早速新疆ウイグル人の収容所隔離という”悪事”を欧州首脳に再認識させ、説得したため、EUが中国に制裁措置を取りました。これに対し、中国側も報復措置に出たので、中欧協定の批准は結局、凍結となりました。

 中南米は米国のバックヤードカントリ-(裏庭国家)と言われています。かつてソ連キューバに手を出し、核兵器搭載のミサイル配置を考えた時、ケネディが烈火のごとく怒り、キューバ危機になったことは有名。これを見ても分かる通り、米国は自国の安保上、裏庭国家への他国の介入を許さないのです。ところが、近年、中国が中南米諸国に盛んに秋波を送り、ホンジュラスエルサルバドルなどの貧困国に対し、「ワクチンを提供するから台湾との関係を切れ」などと条件提示で接近を図っています。こうした横ヤリに米が目をつぶることはありません。

 国際政治的に見れば、米中の関係は今、「トゥキディデスの罠」状態に入ったと言えます。古代ギリシャで、スパルタ国が勢力を伸ばし、台頭してくることを快く思わないアテネ国がある段階でスパルタに戦いを挑んだことがありました。ハーバード大学の学者グレアム・アリソンは、新興国が既存の大国の存在を脅かそうとすると、大国は必ずつぶしにかかるということを一つの定型的な行動様式と考え、古代ギリシャの歴史家の名を取って「トゥキディデスの罠」という言葉を作りました。

 かつて、太平洋進出を狙った大日本帝国も、欧州で第三帝国を築こうとしたナチスドイツも米国にたたかれています。今の中国はまさに古代のスパルタや第二次大戦時の日本やドイツと同じような状態になっているため、米国は見過ごせないのです。中国がこれ以上の軍事拡張を図り、勢力圏を伸ばそうとすれば、戦争になるでしょう。習近平は米、欧州、日本、さらにはインド、オーストラリアなどを敵にして大戦争でも起こすつもりでしょうか。彼が言う「中国の夢」とは、国が破壊される危険性があっても強国になりたい、自身が世界の覇者になりたいということでしょうか。

 中国も今、それなりの経済発展を遂げており、中国人も現在の生活を犠牲にする戦争など真っ平でしょう。いかに発言、表現、報道の自由がない国とはいえ、諸外国に自由に旅行をし、諸外国の事情を見てきた中国人です。一方的な軍事拡張、それを引き金にした戦争など望むのでしょうか。ありえません。もし、そんな事態を招こうとする習近平政権に反対しない、できないとすれば哀れの極みです。

 米中対立で、米英などは今、マグニツキ―法という特定個人を対象にした制裁措置を実施しています。香港で民主派、学生に強硬姿勢で臨んでいる林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、息子が米国にいるので自由に米国に行きたいのでしょうが、彼女は今、マグニツキ―法の制裁対象者ですから、米国、英国にも行けず、米英銀行の口座も使えないようで、困っているらしいです。小生も口座を持つ香港ベースの銀行「香港上海銀行」は使えるかも知れませんが、、。

 大陸の共産党幹部でも米欧の銀行に預貯金をしたり、不動産を持ったり、子弟を留学させたりする人が多いので、マグニツキ―法の対象になれば困るでしょう。反対に、欧米人が中国側から個人制裁を受けても何も困りません。欧米人で中国の銀行に口座を持ち、大量に預金している人は稀有でしょう。中国の不動産も、土地が基本国有ですから、いつかは没収される危険性もあり、持ちにくい。ですから、互いに制裁合戦をして、どちらが困るかはすぐに分かることです。

 マグニツキ―法は、強硬政策、措置に関与する共産党幹部の家族、親戚も制裁対象になるケースがあります。習近平主席にとっても、娘をハーバード大学に留学させたほか、実姉斉橋橋の夫婦が米国に不動産を持っていると言われており、米国は親しみのある国でしょう。親戚、家族が制裁対象になって米国に行けなくなると困るのではありませんか。

上の写真は、夕闇迫る横浜みなとみらい地区の遠景。ワールドポータース、ハンマーヘッドに至る万国橋からの撮影。

別涙 (わかれ) 因幡 晃 - YouTube

20歳台のころ、いろんな別れを経験しました。ですから、今この歌を聞くと、当時のことが蘇ってきます。米中も別れの時か。