つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

馬英九政権で大陸と経済緊密化へ

 再び、3月に取材に行った台湾総統選の話に戻ります。
 ビジネスマン、経済界は馬英九氏の当選を本当に望んでいたようです。それは、選挙明けの月曜日3月24日、市場の数字にはっきり表れました。台湾の株式指数は寄り付きでいきなり9000ポイントまで上昇、終値でも前週末比340ポイント増の8865ポイントとなったのです。売買代金は2708億台湾元以上で、過去12番目の大商いになったとのこと。とりわけ、建設、観光、金融、セメント、航空関係の企業の株が上がったのは、大陸との交流増に期待感を示したものでしょう。
 馬政権は5月20日に正式スタートしますが、では、具体的にどういう変化が予測されるのでしょうか。目に見えて現れる大きな変化は大陸との経済緊密化。今では三通(通郵、通商、通航)はほとんど実現していますが、明確にもっと通航が進展するはずです。馬氏は、休日の中台直行チャーター便の運航を公約しているからです。これまで、上海と桃園間は香港、マカオ経由で5時間以上かかっていましたが、直行便ができればわずかに1時間40分。「これならば、日帰りもできる」と、上海に進出している台湾企業のビジネスマンは喜んでいます。
 直行便が通れば、大陸の観光客も呼べます。旅行業界は、一日当たり3000人、年当たり109万5000人が来ると推計しているのですが、彼らが平均7日間逗留し、237米ドル消費すると、一年で台湾に18億1430万ドル余の金が落ちる計算です。さらに、この数は年々増え、4年後には一日当たり1万人が来訪し、そのときに台湾の観光総収入は6000億台湾元を突破するだろうとの皮算用もしています。経済界はさらに、大陸客の流入で不動産需要なども高まると期待しており、国民党が公約とした「経済成長率6%、国民所得3万米ドル、失業率3%以下という目標の実現は可能だ」と見ています。
 大陸との交流を経済復興のジャンプ台と考える国民党政権のあり方に、体制維持の観点から不安視する見方もないわけではありません。筆者が取材した経済人の中にも「台湾企業の大陸進出に加えて、すでに40万人の大陸花嫁が台湾男性に嫁いでおり、彼女らは大陸との一体化を望み、進めている。この上、恒常的に観光客が来たら、台湾は事実上、大陸の一省になってしまう」と嘆き、共同市場化が進めば、確実に大陸に飲み込まれると危惧する人もいました。でも、そうは言っても選挙結果が示すように、生活のためには背に腹は変えられないということでしょう。
 下の写真は、台湾で多くの取材をご一緒した宮崎正弘さんと、民進党の選挙本部内で撮ったもの。選挙3日前ですが、結構盛り上がっていて、「逆転勝利」があるようにも見えました。