つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

政府紙幣は西郷札か軍票か

 財務省を辞めて東洋大学の先生をしている高橋洋一という方が最近、やたらと「政府紙幣」の発行を提唱しています。ご存じのように今流通している紙幣は日本銀行の発行で、紙幣の発行には厳密に裏付けとなる歳入が担保されています。政府紙幣とはこうした裏付けがない新たなマネーで、つまり打ち出の小槌を振るようなもの。自民党内にも議連が立ち上がり、何やら本気になっている人もいますが、これって本当に景気回復に有効なのでしょうか。
 単純に考えれば、紙幣を過剰に発行すれば、インフレが起こりますし、ハードカレンシーとしての日本円は信用を失うでしょう。高橋教授は、「25兆円くらいの政府紙幣を流通させてもインフレが起きない」と根拠もなく強気です。25兆円といえば、国民1人当たり20万円もらえる勘定になり、貧乏人には大助かりですが。
 日本人は貯蓄性向が高いので、1500兆円ともいわれる個人資産がありながら、さっぱり消費マインドは湧かず、老後に備えるばかり。確かに、そんなときに、こども銀行券、あるいは昔の藩札、西郷札のような別刷りのカネが入ったら、ため込まずにすぐ使うかも知れません。そういえば、香港時代に「軍票」の取材をしたこともあります。
 デフレーションの時代だから、一定割合のインフレを呼び込もうとするのはアイデアとしては面白く、90年代にも「インフレターゲット論」として議論になりました。ただ、諸物価が上がることは、やはり避けられないから、給与は上がらない、あるいは収縮している一方で、物価高になるスタグフレーションに陥る危険性があります。そうなると、現状よりもさらに悲惨です。
 今、政府や地方が抱える膨大な債務を解消するには結局、ドラスチックに徳政令を出してチャラにするか、インフレによって相対的に負債の額を減らすかのどちらかなのです。しかし、いずれでも困るのはやはり庶民だということをしっかり頭に入れておかないと。目先の20万円でだまされてはなりません。
 下の写真は、香港に行ったときのもの。珠海に行くフェリー乗り場・中港城の待合室から香港島のビクトリアピーク方面に落ちる夕日を撮りました。