つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

ものを見る視点の位置も大事

 小・中学校時代の友人が理事長をし、小生も評議員の一人になっている留学生支援の財団で、新年度に奨学金を出す学生を決めるということで、その選抜の面接員を務めるため、先週26日の金曜日、千葉にある財団事務所まで行ってきました。記者として通信社にいた時代、さらにはその後の時代にもなかった”人を選抜する”という貴重な経験をさせてもらいました。
 応募者のほとんどが中国人で、そのほか韓国人が2人ほど。事前に彼ら、彼女らのプロフィールとともに、「日本に来ていちばん感動したこと」という作文を手渡されていたので、小生もつぶさにそれを見ました。それぞれ感動した内容、作文力とも立派なものでしたが、その中でも、特に小生の心を揺り動かしたのは、ある中国人女子学生の書いた文章でした。
 彼女は、あるスーパーマーケットのアルバイトをしているのですが、「その仕事が終わったとき、アイスクリームを食べるのがいちばんの楽しみだ」と書いたあと、ある日、アイスを食べながらスーパーの入口付近を眺めていると、入口上につばめが巣が作ってしまったのを発見。そこで、つばめの巣と子どもたちはどうなるのかと心配するのです。
 彼女は中国での経験からでしょうか、入口付近でふんを垂れ流し、営業妨害するようなつばめなどすぐに排除されてしまうだろうと予測したようです。しかし、翌日、仕事に来てみると、つばめの巣は撤去されていないばかりか、つばめのふんを受けるように下に段ボールが敷かれ、スーパーの客はそれが当たり前のように段ボールを避けて店に出入りしていたということに感動したというのです。
 他の多くの応募学生が、特定の日本人に親切にされたという経験を書いているのに対し、この女子学生の目線の対象が直接人間でなく、人間と日常的に接している動物であり、間接的にそれと協調しようとする日本人の優しさに注目した点に驚きました。そして、この女子学生は、ことさらその日本人の優しさをほめるわけでもなく、この人間と自然の調和を目にして「本当に癒され、晴ればれとした気持ちになった」とだけ書いているのです。
 彼女の視点もさることながら、そのずば抜けた日本語の文章力にも驚きました。この彼女、実際に会ってみると、どんな人なんだろうかと興味がありましたが、会ってみると、実際に「つばめと人間との調和」に感動できるような心根を持った女性だと感じ、小生自身は、この女性に二重丸の及第点を与えました。人の優しさとは、ものを見る視点の位置もまた大きな要素なのだと、彼女に教えられました。小生が面接したのではなく、小生が面接されたようなものです。
 下の写真は、青森りんご園での小生。