つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

侵略の理屈はいつも「元領土の回復」

 ここ1世紀くらいの歴史を見ていると、およそある国が他国へ侵略するとき、なにやらもっともらしい理屈を付けてくるものだということがよく分かります。つまり、「お前の国をこれから侵略するぞ」とか「お前の国に入って、われわれの好きなようにするぞ」などと言って、入ってくるケースは皆無ということです。
 ヒットラーが1939年にチェコスロバキア・ズデーデン地方の併合を強要した理由は、この地区に住む住民はドイツ人がほとんどで、それはもとからドイツの領地であったからではないかというものでした。この併合強要について、英国のチェンバレン首相と仏のダラティエ首相はヒットラーが示したその理由をさもありなんと思ったか、ミュンヘン会議でドイツに譲歩し、併合を認めてしまいました。この譲歩がのちに欧州全体を巻き込む悲劇になったのは周知の通りです。
 1990年末にイラククウェートに侵攻したときに、サダム・フセイン大統領がかざした理屈は「クウェートはもともとイラク領だったのだから」というものでした。アルゼンチンも1982年、北大西洋にある英国領のフォークランド島を占拠したときも同様。このように、侵略の歴史を見ると、「この土地は元々われわれのもの。だから奪回する」というのが多いのです。
 100%譲って、歴史的文献から「元の領土である」とします。それでも、それを盾に力づくで取り返しに来るというのは、どうでしょうか。現在の領土秩序を壊そうとするのであるから、新たな帝国主義、いやその言葉が悪いならば、新たな覇権主義と言ってもいいのではないでしょうか。
 今、日中で問題になっている尖閣諸島についても、中国は「これは中国の領土だから」と無前提に主張し、力づくでの回復を狙っています。中国は21世紀のヒットラーになったのでしょうか。日本が中国を気にして腫れものに触るように実効支配”させていただいている”岩礁に、なぜ中国はわざわざ事を荒げるような仕打ちをしてくるのでしょうか。理解できません。
 今回の北朝鮮が韓国の島を砲撃した例を見るまでもなく、一党独裁で国内世論が限定されて、反対意見が出にくい国の怖さをわれわれは改めて感じないわけにはいきません。
 下の写真は、寧夏回族自治区の銀川のブドウ園で出合った犬。番人の老人のそばにいてずっとブドウ園を見張っていたかわいいヤツで、思わず自宅の愛犬を思い出してしまいました。