つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

SM作家は実は紳士でした

 いつも新聞で最初に見るのは訃報欄ですが、最近驚いたものは小説家、団鬼六氏の訃報でした。小生は団氏のSM、ポルノ小説を一度も読んだことがありませんから(ポルノエッセイは読んだことがありますが、)、その小説のファンではありません。実は、小生が香港に駐在していたとき、日本将棋連盟主催による将棋ファン香港ツアーがありましたが、その代表団一行を実質的に引率してきたのが団先生で、そのとき出合ったのです。
 一行はホテルでファン感謝デーのような催しをしたので、小生も参加しました。将棋好きといってもものすごい将棋ファンではありませんが、仲のいい香港の友人がぜひ催しに行ってみようということで、一緒についていったのです。そこで、同行の人何人かと将棋を指したのですが、最後に団先生から「どや、一局指そうや」ということでお相手することになりました。
 団鬼六先生は、人ぞ知る将棋のつわもの。実力はゆうにアマチュア6段はあるでしょうね。その大先生に向かって初段になるかならかいかという程度の小生が平手でお願いし、しかも相手の居飛車に対し、こちらは大胆にも向かい飛車で対抗しました。小生はある程度序盤の組み立ては知っているので、序盤は勝負になりました。ですが、徐々に実力が出てきて劣勢になり、最後は簡単に負かされました。
 でも、団先生は「いやー面白い将棋だった。君は強いね」と世辞を言ってくださったのです。それまで、SMなど書いている小説家ですから、はすっぱな人かと思っていたのですが、意外にも(失礼!)落ち着いた紳士なのでびっくりしました。そこで話が弾み、先生から「今度、僕の弟子の小説家が香港に来るから、面倒見てやってくれないか」と依頼がありました。
 その弟子の小説家とは、名前は今、失念してしまいましたが、女性のポルノ小説家として名をはせていた人です。来訪したとき、小生は彼女を日本居酒屋に誘い、親しくご懇談させていただきました。そんなこんながあったので、団先生には強い印象がありました。
 日本に帰国後、アマチュアの賭け将棋師の生涯を描いた「真剣師 小池重明」や、将棋を題材にした短編集などを読み、その筆力、エンターテーメント性も含めて団先生はすごい小説家なんだと改めて感心した次第です。よくよく調べてみれば、団先生はもともとは純文学者で、昔は感性鋭いいい小説が書いていたらしいのです。小生はそこまでは読んでいませんが、、。
 その後、彼は大衆小説誌のエッセイの中で、腎臓病を患い、人工透析を受けていることを告白していました。透析をしているなら、当分は生きていい小説を書いてくれるだろうと思っていたものでしたから、今回の訃報はそれなりにショックでした。冥福を祈りたいと思います。
 下の写真は、山の上から見た青島のドイツ洋館街。手前の瀟洒な洋館は、ドイツ植民地時代に総督が住んでいたところといわれています。