つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

北方4島の2島先行返還もありか

 先般、衆院第一議員会館で開催された講演会に出席し、旧ソ連の外交官で、その後に日本の大学教授に転身、現在ロシア外交アカデミーの露日センター長をしているコスタンチン・サルキソフという御仁の話を聞きました。小生も一応、国際政治を教えている端くれとして、ロシアが今の極東情勢をどう認識しているのか、今後日ロ関係をどうしたいのかという点にたいへん興味があったのです。
 彼の話によりますと、日本人の人の良さ、日本製品の品質のよさを含めてロシア人の総合的な対日感情は悪くなく、北方4島問題で悪感情を持つ日本の対ロシア人観とは100%違うとのことです。ロシアは本当は返そうと思えば、4島は返せるが、しかし国内にも民族主義的な強硬反対勢力があり、しかも日本は米国と安保条約を結んでいることから、安全保障上の観点で返還はなかなか難しいというのです。
 この辺までは、まあまあ予測できた話ですが、彼の話で面白かったのは、ロシアにとって日本は何の脅威でもなく、むしろ極東でいちばん脅威に感じているのは中国であるとのこと。それは、人口減が進む極東ロシアに中国人がどんどん入り込んでおり、いつの間にかシベリアに中国人の町や村ができてしまうことを恐れるとのこと。もともと、大清帝国のときにシベリアのかなりの部分は領土だったわけですから、中国人は100年ほどの長期計画で旧領土を取り戻しに来ることが考えられると言うのです。
 そして、ここからが彼の真骨頂。中国の脅威に対処するためにはむしろ日露は強いパートナーシップを持つべきで、そのためには早期に4島問題を解決し、平和条約を結ばなくてはならない。だから、実現不可能な4島の一括返還を求めず、当面は歯舞、色丹の2島の返還とし、国後、択捉島はその後の継承問題にしてはどうかという提案でした。
 まあ、よく考えると、ロシア政府の基本的スタンスと大して違わないのですが、最初に日本との友好増進意思があるとの前提を出されると、小生も含めて多くが「ああ、そうなのか」と感心し、2島の先行返還もありうるかもと思った次第です。サルキソフ氏は親日のポーズを取りながら、やはりロシア政府の宣伝マンにすぎないのかも知れません。でも、彼の言うように、4島一括返還に固執すれば、永遠にどの島も戻らないようにも見えますから、ここはちょっと妥協、工夫が必要なのかとも考えさせられました。
 下の写真は、山東省青島と省都の済南を結ぶ新幹線の出入り口付近。結構速いスピードで走っていました。