つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

中ロ国境地区視察で、入管の尋問受ける

 かつての記者仲間ら4人で行く毎年夏恒例の旅行はこれまでも触れていますように、今年はロシア極東旅行でした。観光旅行でないので、今までどちらかと言うと誰も行かないようなところを選んでいます。皆、中国駐在経験が豊富なので、勢い目的地は中国が多く、これまで北朝鮮との国境、ロシアとの国境、内モンゴル自治区ベトナムから中国広西チワン族自治区への旅などに行っています。
 しかし、昨年、中国でスパイの摘発を厳しくする法令ができ、その結果、日本人5人が今、スパイの容疑で捕まっています。中国当局は、「日本政府、特に公安調査庁の指示を受けて中国をスパイしていた」と容疑内容を説明するけど、本当にそうかどうも分からない。記者というのは現地取材をするので、スパイ活動とは紙一重。われわれも国境地域になど行っていたら、いつかあらぬ疑いを掛けられ、逮捕されかねません。
 そこで、仲間同士「しばらく中国の辺境旅行はお預けだね」ということになって、今年はロシアの極東部を目的地に選びました。でもロシア極東部であれば、やはり関心が高いロシアの中国国境に行きたくなる。最大都市ハバロフスクは特に、2004年に中ロ間の領土確定で二分割された大ウスリー島のすぐ近くです。
 そこで、ロシアガイドの案内で大ウスリー島を”探検”してきました。できたばかりとみられる同島へ続く大橋を渡ると、そこは草ぼうぼうの草原と叢林の原っぱ。牧場がある以外、何か建物があるわけでもありません。やたらアブが多く、人気を感じるとブンブンと寄ってきます。
 いくつかキャンプ場があって、テントを張るグループがあり、ロシア人が10人程度、国境近くの川で泳いでいました。われわれがカメラを向けると、水着を着たデブのおばさんがかなり怒った様子でガイドに詰め寄ってきました。われわれはロシア語が分からないので、何を言っているか不明ですが、恐らく「許可を取ったのか」などの話でしょう。
 われわれはこの前日、ウスリー川を挟んだ別の中国国境の村も視察しています。カーサキビーチェボというその村は、入るときに事前申請が必要で、検問所もありました。ですが、村に入ると長閑なもので、農家のほか、都会人のダーチャ(別荘)などがあります。民族博物館みたいなものもあり、館長のおばさんが親切に説明してくれます。レストランはないので、昼飯は旅行社によって養蜂農家でセットされ、現地の農家食を食べました。
 ウスリー川を挟んで向こう側は中国領土。「東(中国でもっとも東にあるという意味か)」という漢字をデフォルメしたような形の高い鉄塔が見えました。ここには橋もフェリーもなく、両岸両国民が交流することはないのですが、現在の中ロ蜜月を象徴するように、国境に険悪なムードは漂っていませんでした。
 日本人で国境見学は珍しいからでしょうか、2つの国境地区に行ったことで、翌日夜、ロシアの入管当局がわれわれのホテルの部屋を訪ねてきて、「何の目的で村に行ったか」と質問してきました。事前許可も取ったし、ガイドも一緒の見学だったのに、この訪問にはちょっと驚きました。


上の写真は、大ウスリー島で中国側鉄塔を背景にした小生と、国境近くの支流で泳ぐロシア人キャンパー。