つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

言論、表現の自由ない国にはかなわない!

 今夏の中国旅行で、こちらが日本人で中国語が話せると分かると、すかさず尖閣諸島問題で議論を吹っかけてくる人たちに遭遇しました。広東省広州市で「愛国教育基地」として有名な黄埔軍官学校を見学した際、土産物屋のご主人が「釣魚島は中国の固有の領土だろう」などと言って話を振ってきました。その際、小生が使う対抗話術としては、「中国固有の領土ってだれが決めたの?」、「確かに島の発見は中国が先でしょうね。でも、19世紀末、国際法上のルールに則って日本は尖閣諸島の領土化を決めたんですよ」という形で反論します。
 この「だれが決めたの」という言葉には中国人はなかなか反論できません。なぜから、共産党の独善的な洗脳教育ではアプリオリに「中国固有の領土」と言っているだけで、その根拠についてはほとんど言及、説明していないからです。敢えて言うとすれば、昔の書物にいっぱい「釣魚島」の記述が出ているということでしょうが、発見即領土ということにはなりませんね。ただ、中国人は一般にこの発見即領土化という”幻想”に固執します。確かに、大陸から琉球に来る冊封使の記録には「釣魚島」の記述は多数ありますが、残念ながら尖閣諸島に上陸したり、住んだりしたという記述はありません。
 次にこちらが「国際法上は日本は正当な手続きを踏んでいる」と言うと、土産物屋のおっさんは「そんなものアメリカや西側の帝国主義者が決めたものだ」と反論してきました。まあ、この時点で議論は成り立たなくなりました。なぜなら、帝国主義時代であっても、国際法上の手続きはあくまで国際法上の手続き。それを否定するなら、現在の諸国の国土確定は認められない、中国が力で新しい秩序を作ると言っているに等しくなってしまうからです。そんなことを土産物屋のおっさんに、るる説明するのも億劫だし、こちらの言語能力にも限度があるからやめにしました。
 この尖閣諸島問題で小生はいつも思うことですが、中国側は共産党反日教育の一環として、「かすめ盗られた領土」の問題を学校現場で徹底的に教育しているので、彼らはいつも攻撃的です。一方、我が国では、日教組教師が「領土争いなどに触れることは、日本を戦前に戻すことにほかならない」とばかりにまったく教えませんので、一般人は議論の土台がありません。実は、日教組教師たちの言う素晴らしい日本国憲法、自由な政治、社会制度は、領土があって、住民がいて初めて成り立つものなのですが(これは国家論の常識)、なぜか領土意識が薄いのです。小生は大学の授業の中で、領土問題の大切さを強調しますが、残念ながら小中学校で受けた教育の影響が冷めやらないためか、学生たちはどうも柳に風の風体です。
 先般、大江健三郎氏や本島等長崎市長らのいわゆる”進歩的”な文化人が集まって、尖閣竹島も日本の侵略の歴史が背景にあると指摘し、「領土問題で国家関係が対立する悪循環を断ち切ろう」とアピールしました。ノーベル賞候補にもなった村上春樹氏は「領土問題の熱狂は安酒の酔いに似ている」などと朝日新聞に書いたそうな。日本は言論の自由がある国なので、何を主張し、何を発言するかは勝手ですが、彼らの言はむしろ日本政府にではなく、ぜひ中国側に言ってほしいものです。
 一方、言論も、表現の自由のない中国では、焦国標という元北京大学准教授が、ネット上に石原東京都知事あての公開書簡を出し、「私はあなたの尖閣諸島購入も日本の国有化も支持する。このために1000米ドル寄付してもいい。石原さん、ついでに中国人の基本的権利を奪う共産党の(機関が入る北京の)中南海も日本が国有化してくれないか」と書いたら、中国の国家安全部によって国家政権転覆扇動罪容疑で逮捕されてしまいました。焦国標氏はかつて、思想の取り締まりに当たる中国の党中央宣伝部に対し、「中央宣伝部を解体せよ」と書いたほど勇気のある人。焦氏はすでに釈放されているようですが、この言によって現在自宅軟禁中です。
 日本では2チャンネルなどでよくお見受けするような半分、冗談ともつかないこんな発言でも逮捕、拘束されてしまう国の怖さを、進歩的な知識人とやらはもっと取り上げ、焦国標さんの自由を勝ちとるためのアピールでもしてもらいたいと思います。
 下の写真は、タイのバンコク中心部にあるルンピニ公園の池の中で泳ぐオオトカゲ。体調2メートル近くあるこの珍獣が池の淵を泳いでいて突然首をもたげました。小生、何も知らずに池の淵を歩いていてびっくり。人に危害を加えることはないから池に放っているのだと思いますが、初めての人は驚くでしょう。