つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

今は、戦後秩序の改変言うべきでない

 昨日、ある会合で久しぶりに旧知の元大手紙政治部記者と会いました。今でも論説委員を務める彼との話の中では、当然安倍首相のことが出ましたが、論説委員氏が言うことには、「満を持して再登場したから、安倍氏ははしゃぎ気味で、やる気満々。外交にしろ、経済にしろ、何でもやりたくしょうがない。でも、方向性や焦点が定まっていない。結局、すべて中途半端に終わってしまうのではないか」と心配していました。
 特に、論説委員が気にしていたのは、外交の方向性が明確でないこと。「尖閣諸島問題で中国に強気に出るのは結構だが、それには絶対米国の後押しが必要。しかし、彼は一部の反米独立派に躍らされて、第二次大戦後の秩序の見直しまで言い始めた。侵略の定義はないなどと言い出して、戦前の日本の在り方を擁護し始めた。これは、戦後秩序の改変を嫌う米国を敵に回す恐れがあり、危険だ」と言うのです。小生もその意見に大いに賛成するところがあります。
 今、日本の主要敵は、尖閣諸島を奪いにきている中国です。これに軍事的に対抗するためには、米国の支援抜きには考えられません。ですから、今は米国の望まないことを言うべきでないのです。安倍首相が戦後秩序への疑いを示したことで、中国はどう動いたか。李克強首相が早速、戦後秩序にかかわるポツダム宣言が出されたドイツのポツダムに行き、「戦後秩序の改変反対、日本は敗戦国のくせして、領土を乗っ取った」などと尖閣問題と戦後秩序を絡めて自らの正当性を世界にアピールしたのです。
 橋下徹大阪市長慰安婦発言で、米国のメディアや世論に日本批判の論調を出させてしまったこともまずかった。安倍発言の”傷”の上に塩をすり込んでしまった形です。戦後秩序に関しては、中国(厳密に言えば中華人民共和国でなく、中華民国ですが、、)と米国は共同歩調が取れる立場ですから、中国はそれを強調し米国との連携を謳い上げ、日本をけん制しようとすることは目に見えています。したがって、そういう機会を与えてしまった安倍発言や橋下放言は、現時点で安全保障上の大きなマイナス点となったことは否めません。
 小生も、安倍氏の反米独立志向はよく分かります。最終的に日本は米国などに頼らず、自主防衛できる軍事力を身につけ、他国につけ入るすきを与えない状態とするべきです。米国の属国のような立場を止めなくてはならない、そのためには、米国が中心となって定めた戦後秩序に挑戦していかなければならないという安倍氏の心のうちは分かります。でも、今は辛抱してください。対中国戦略のために、戦後秩序論を封印して、日米安保体制を強調することが大事です。そうしないと、ASEAN諸国やインド、ロシア、オーストラリアから総スカンを食ってしまいかねません。
 下の写真は、千葉県銚子市犬吠埼灯台付近の海岸。