つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

出自批判は前時代的な発想

 週刊朝日がノンフィクションライターの佐野眞一氏を使って、橋下徹大阪市長に関する連載を始めたところ、当の本人や各界からの批判が多く、連載を止めたことがありました。この事件で、驚いてしまうのは、いつも人権、人権と言っていたような気がする朝日新聞社の系列週刊誌が、「ハシシタ 橋下徹も知らない本性をあぶり出すため、血脈をたどった!」などと銘打って政治家の出自を問うような特集を計画したことです。この新聞がいかにいい加減な新聞であったかはこの一点からもよく分かります。
 週刊誌は売り切れてしまって、小生は読んでいないのですが、報道によれば、どうも橋下氏が被差別部落の出身であり、父親が元やくざで自殺したことなどを書き、橋下氏がいかに非社会的な人物であるかを浮き上がらせる意図があったとか。著名なライターを使って、なぜこんな企画が考えられるのか、不思議でなりません。
 ご承知のように、橋下氏はスモールガバメント主義者であり、地方自治体の激しい改革論者。ですから、既得権益でのうのうとしてきた公官庁の役人にとっては敵です。特に、労働組合系の役人には目の上のたんこぶですから、なんとか彼の評判を落とし、「維新の会」ブームを冷ませたいと考えたのでしょう。こういう人たちは従来から朝日新聞のシンパですから、朝日新聞をそそのかしたところ、愚かなことにかの新聞も、売らんがなのためにそれに乗ったということでしょうか。
 でも、冷静に考えてみれば、こんなことで橋下氏の政治家としての資質が貶められるものではありません。小泉純一郎元首相はおじいさんがれっきとした稲川会系のやくざであり、背中に入れ墨をした国会議員でもありました。しかし、小泉さんは5年も首相をやって、今でも再登場が期待されているほどの人気政治家です。さきごろ死んだ浜田幸一氏はやくざ(彼も稲川会系)であることを広言していましたが、地元では大人気で、中選挙区時代にはいつもトップ当選でした。本人がやくざであってもそうなのですから、父親がやくざであったなどは、選挙民の投票行動にみじんも影響を与えないでしょう。
 ましてや、被差別部落や、帰化した元朝鮮、中国出身者という出自も選挙民はあまり考慮しないのではないでしょうか。京都出身の野中広務氏は、自らの出自を隠そうとしませんが、しかし、彼は自民党の幹事長にまでなった人で、政治的なプロモーションでは何の影響も受けていません。民主党には「白真勲」という明らかに朝鮮系の帰化人と分かる名前の議員がいます。要は、政治家は個人の能力が問題であって出自を云々しても意味がないのです。
 島崎藤村の「破戒」の時代ならまだしも、国際結婚も多く、混血が進んでいる今の世の中、出自を云々するのは前時代的な発想として葬られています。それは「噂の真相」がつぶれたことからも容易に理解できるはずです。そんなことを知ってか知らずか、橋下氏追い落としのためなら手段を選ばず何でもするといった感じで、「人権派」といわれる朝日新聞はついに悪魔の手段を使ってしまいました。報道機関としては情けないことです。
 下の写真は、バンコクのチェーン店「孫文シーフードレストラン」の名物メニューである蟹カレー。蟹の味とカレーの味がマッチングしたなかなかおいしい料理です。