つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

ロシアとの領土問題解決は今がチャンス

 森喜朗元首相がこのほどロシアを訪問して、プーチン大統領と会談、領土問題の話し合いをしました。かつてプーチン氏は訪ロした日本のマスコミ代表団に対し、柔道の言葉を引用して「領土問題は引き分けで」と語っていたので、森元首相は今回、その「引き分け」の真意を尋ねたようです。
 森氏の質問にプーチン氏は改めて「双方勝ち負けなしの解決方法」と説明したそうです。「引き分け」とは確かに「勝ち負けなし」という意味ですから、その通りの説明なのですが、やはりこれはかなり突っ込んだ示唆ではないかと小生は思ったりしました。日本政府は、このプーチン氏の示唆をどう受け止め、そう対応していくのか、非常に興味があります。
 北方4島問題は、戦後70年近くもたつもの、一向に解決していません。小生思うに、これは日本側が4島の一括返還にこだわっているのが原因です。日本は外交交渉ではいつでも律儀なのですが、最初から最終的な到達目標、つまり掛け値なしの要求を突き付けすぎます。日本側が4島一括返還を提示し交渉に入り、その要求が通ったとしたら、日本はオールであり、ロシアはナッシングとなります。それで、日本は満足でしょうが、ロシア国内は納得できるのでしょうか。
 交渉というのは、いつでも最後は双方が譲歩し、折り合うことであり、最終的には双方とも幾分かのマイナスを覚悟しなくてはならないと思うのです。日本がもし、全千島列島の返還要求を出していたならば、4島での妥協もあり得たでしょうが、最初から4島返還の要求であれば、”値切り”はこの値からスタートするわけで、ロシア側のメンツを立てるならば、当然、4島全部とはならないはずです。
 今のロシアの国力、政治状況などから判断して、近い将来、4島一括ということが考えられないのであれば、当面の実利を得るということも必要であり、鈴木宗男氏や一部の外務官僚OBが言うように、4島一括にこだわらない解決方法を今、模索する時ではないかと思うのです。時間がたてばたつほど、世代が交代すればするほど、交渉開始は難しくなります。
 ただ、歯舞、色丹2島だけの返還はないと思います。これは、ソ連時代から、平和条約の手土産としてハナから向こうが用意しているものなのだから、日本には「交渉で勝ち得た」という感じにはなりません。ですから、せめて領土2分論(これだと択捉島の3分の1まで日本領土)か、国後島までの獲得でいいのではありませんか。森元首相も国後までの返還を言っています。 
 日本は今、なぜロシアとの交渉妥結、平和条約締結を急がなくてはならないのか。それは、ロシアは、少なくとも日本に対し侵略的な姿勢を見せていません。それどころか、シベリア開発の資金欲しさで日本の協力を仰ぎたい、誼みを通じたいという感じに見えます。半面、シベリアのロシア人離れが進み、その分中国人の移住が目立っており、領土的にロシアは今、中国の”脅威”にさらされています。日本も尖閣諸島問題で中国の脅威にさらされており、安全保障上で言えば、双方の”主たる敵”は中国で、共通しています。ですから、中国を警戒するロシアと日本は今、ある意味、手を携える状況にあるのです。
 かつて、ソ連という主たる敵を前に、米国との接近を図った中国の毛沢東主席のように、中国の脅威にさらされる日本は今こそ、ロシア接近を図らなければならないのです。おそらく、プーチン大統領もそういう戦略思考を持つからこそ、「引き分け」などというキーワードを使って早期の領土問題解決、日本との関係強化を目指しているのだと思います。
 下の写真は、先日、川崎市多摩区の友人宅を訪れた際、駅頭から見えた丹沢山塊と富士山。