つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

預金課税は天下の愚策

 EUの金融危機は、ギリシャから始まって、スペイン、ポルトガルアイスランド、イタリアなどでも問題が露呈、最近ではなんと地中海でもアラビア地域にもっとも近いキプロスまで波及しているとか。こうした現象を見ると、これはある一定の野放図な国家の問題でなく、普通の国でも、高度な福祉などを実現するため、税収以上に総歳入を膨らませざるを得なという現在の財政システム自体に問題があるではないかと思えてなりません。
 その”瀕死”のキプロスで今、争点になっているのが銀行預金に課税する制度の創設。この法案は同国議会でいったんは否決されましたが、同国がユーロ圏に残るための方策として再び上程されるとのこと。最初のお触れのとき、預金者は店頭に長蛇の列を作って、預金引き揚げを目指しました。だが、国側もさるもので、銀行に命じて引き出し凍結という措置に出ており、預金者との間で緊張した状態となっています。
 前にも書きましたが、預金課税は、徳政令とは逆の意味で、ルール無視の禁じ手だと思います。もし、預金課税が恒常的にあるとするならば、だれも預金しないことは自明の理。預金は別に自分が住む国だけでする必要はないわけですから、国民の金は当然安全で金利の高い他国へと向かうでしょう。いわゆるカントリーリスクに対応した金融資産の移動です。
 日本でも民主党政権時代に、消費を活発化させるため、一時、預金課税の策を持ち出す人がいました。預け入れ金利は安いし、銀行からの金の引き出しにいちいちチェックされることを嫌って、今でもかなりの金がタンスの中に眠っているとされている日本で、預金課税などすれば、さらに金が銀行から引き出され、家のタンスや庭のカメの中に埋蔵されてしまうでしょう。
 もし、預金課税制度を導入し、同時に引き出し凍結措置を取ったとしたら、国家は一時的に相当額の税収を確保するでしょうが、国民はその後、二度と自国の金融機関を信用せず、預け入れしないと予想されるので、金融機関は崩壊します。預金課税などは、天下の愚策だと小生には思えてなりませんが、それがキプロスでは現実のものとなりつつあります。再度の議案上程で、その可能性が高まりました。
 もし実行されたら、それはキプロスだけにとどまらず、最初は同じEUの準金融破たん国。EU全体、米国、そして世界中の国々に動揺を与えます。日本にだって影響なしとは言えません。カントリーリスクで言えば、政治的なカントリーリスクのヘッジから、中国では比較的金利が高いにもかかわらず、金持ちの金が今、ほとんど中国にとどまらず、米国に向かっています。
 日本の金はどこに行くのでしょうか。日本人は、諸外国と違って、他国の金融機関に頼るというのは少数派でしょうから、タンスやカメの中に向かうのか。それとも、日本の税務当局が予想もできないような外国に向かうのか。いずれにしても、長い目で見れば、いいことはありません。
 下の写真は、我が家近く野毛山公園の桜。開花が早く、予定が立てにくかったせいか、土曜日にもかかわらず、宴会客は少なかったです。