つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

一票の格差では面積も考慮すべき

 広島高裁が一票の格差問題に絡み、前回の衆院選広島一区、二区の区割りは違憲、選挙結果については無効であるとの判断を下しました。女性の裁判長のようですが、随分と大胆な判断かと思います。最終決定は最高裁にあるので、それまでは今の議員の資格が失効することはないのですが、これらの選挙区で当選した当の議員たちはさぞかし夢見ごごちが悪いことでしょう。
 小生はこの一票の格差問題を見るにつけ、いつも疑問に思うのは、そもそも一票の格差になぜ「2倍」という分岐点を設けたのかがよく分かりません。選挙区確定審議会が「憲法14条の法の下の平等原則から、1人が他地区の2人分の権利を行使するのはおかしい」とし、だから2倍以下と決めたのが発端らしいけど、現在、都市部への人口集中、人口の偏重がある限り、2倍以内というメルクマールをクリアするのさえ、無理だと思います。厳格に運用しようと思えば、都市部の選挙区はますます細分化され、農村部の選挙区はますます広大化してしまいます。
 格差是正を目指し都市部の選挙区を細分化すれば、もう政令都市、大きな市は2つも3つも選挙区が分かれてしまい、市長選以下、いや市議選以下の選挙区になってしまいます。そんな小さい選挙区から選ばれた人が国家全体のことを考えられるのでしょうか。選挙民に迎合して、どこどこの街灯がどうしたとか、道路の修復はどうしたとか、だれだれの結婚式に出席するとかの問題しか考えられなくなるのではありませんか。
 これまで何回もこのブログで触れていますが、小生はそもそも人口比例、頭数によってのみ一票の重みを論じ、議員を選ぶことに疑問を感じています。頭数ばかりではなく、選挙区の土地の大小、選挙区面積も考慮しなければならないのじゃありませんか。今の一票の格差是正などを限りなく追求していけば、都市部からは大量に議員が生まれ、逆に農村部、人口過疎地出身の議員は少なくなります。それは日本国の均衡ある発展を考えるうえで、有効だととても思えません。
 都市戸籍農村戸籍に分けた中国と違って、日本は移動の自由があり、どこに住んでも許されます。北海道で日常的にヒグマに遭遇するようなところから、明日にでも六本木ヒルズに転居し、東京都の港区民になることが可能です。トレンドで見れば、ますます便利になる都市部に人が移り住み、農村部が過疎化する傾向は避けられません。であれば、いったん手直ししても、再び人口増によって格差が生じ、選挙ごとに区割りを手直しする必要に迫られます。いたちごっこ状態です。
 一方、農村部出身議員が減らされれば、過疎化の問題を真剣にとらえられることはなく、議論されることもなくなるでしょう。日本の国土を守ってきた森林や農地の保護について主張する人がいなくなれば、美しい自然環境の維持は危機に陥ります。それこそ、一票の格差などの問題よりさらに大きな問題になってしまうでしょう。
 残念ながら、制度の是非を憲法との整合性、法律との合致から見るだけの裁判官に、政策の有効性、高度な政治判断を期待することはできません。ですから、そういう違憲判決を出すのは仕方のないことです。だが、国会議員は今こそ、人数だけの一票格差論から脱却し、大局的な国家の発展から選挙制度を考えるべきではありませんか。そのために、選挙区の面積に比例する議員数という形は考慮されなければなりません。
 下の写真は、自宅近くの横浜・大岡川べりの桜。今年も満開になり、大勢の花見客を呼び寄せいています。