つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

中央指導者も普通選挙分からない

 香港で行政長官の”普通選挙”をめぐって混乱が起きています。中国中央は、2017年の行政長官選挙を普通選挙にする、つまり有権者にすべて投票権を与えることを保障したものの、なんと出馬できる候補者は1200人から成る「選挙委員会」という審査組織で事前選別するという二重ハードル設定の姑息な案を出してきたからです。選挙委員会メンバーはもちろん中国共産党の息のかかった人ばかりですから、これでは、民主派の候補者は事実上締め出されてしまいます。
 日本でも戦前は、納税額によって投票者を限定したり、女性に選挙権を与えなかったりしたことがありましたが、候補者を絞る事前審査の組織やシステムがあったという話は聞いたことがありません。もしあったら、大問題になったでしょう。事前審査制はまやかしの選挙であり、普通選挙とは言えません。こんな制度を正々堂々と出してくるのがいかにも中国共産党のやり方で、香港の若者が怒るのも無理ありません。
 でも、よくよく考えてみれば、今の中国中央の指導者、たとえば習近平国家主席にしろ、李克強首相にしろ、国民の自由な選挙で選ばれたわけではありません。ましてや、8000万人党員の投票で選ばれたわけでもありません。党の長老などの意見を参考に、引退する指導部内のボス交、あるいは党派、派閥間の折衝などで生み出されたものにすぎません。
 普通選挙で選ばれてもいない中国中央指導者の頭の中では、恐らく普通選挙などの意味が分からないし、考えも及ばないことなのでしょう。ですから、中央指導者に対し、「普通選挙をやれ」などと叫んでも、所詮虚しいこと。香港は一国二制度と言っても、中国中央では、もともと独裁制度以外の政治制度を理解していない御仁ばかりなのだから、「選挙とはこういうシステムなんだ」「そういうのはおかしいよ」と言っても意味のないことなんでしょうね。
 ついでに言えば、中国ではいまだ13億人がレジティマシー(正当性、執政の裏付け)のない共産党政権政党に仰ぎ、その中から選ばれた人を国家の指導者としているのは、どうしてなんでしょうか。あの貧しいインドでも普通選挙をし、政権交代しています。インドの在り様を見るにつけ、「中国は発展途上国。まだ選挙などできない」などという言い訳は通用しないと思うのですが、、。
 民主主義の国英国の植民地であっても、香港は、植民地時代に必ずしも政治システムとしての民主主義を十分に享受していたわけではありません。ですが、RULE OF LAW(法の支配)の下、人権、法治は確保されていたように思います。かつて香港に暮らした者として、香港人民が普通選挙という民主主義を獲得できないうえに、人権まで侵されるような事態にならないよう願っています。

 上の写真は、9月のある週末に開かれた野毛の大道芸ショーの一つ。