つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

天津市爆発事故も権力闘争に利用されるのか

 中国天津市濱海新区で起きた大規模な爆破事故は、どうも権力闘争に発展しそうな雲行きを見せています。というのは、第一、この開発区になぜ大量のシアン化合物が貯蔵されていたのか、それに貯蔵倉庫を所有する「瑞海国際物流有限公司」という企業がどうも太子党により運営されている怪しげなものであることが判明したからです。
 事故後に明らかになったことですが、瑞海公司の55%の株を所有し、企業の支配権を持つ男は李亮という34歳の男なのです。中国で言うところの「80后(パーリンホウ=1980年以降の生まれ)」の若造がなんで工業開発区の重要施設経営者になっているのかと考えてしまうのですが、彼の親族を見ると、さもありなんとすぐに納得します。
 彼は、天津市書記を務めた後、江沢民時代に党中央政治局常務委員に昇った李瑞環の実弟の子供であり、一説には、妻は、これまた天津市書記を経て現在党中央政治局常務委員に収まっている張高麗の娘であるということです。華麗なる「紅色一族」の太子党(プリンス・グループ)であり、もちろん李亮の企業は張高麗が中央で活躍するための資金源になっていたと思われます。
 本来は、大量のシアン化合物を保持することはご法度であり、しかも工場が立て込み、最も危険な地域である地区に置くこと自体異例なのですが、太子党が経営者であり、そのバックに中央幹部がいれば、それは可能でしょう。中国のテレビによれば、李亮本人は「私は名義を貸しただけだ」と弁解しているのですが、「では本当の株主は?」の質問には口を濁しているようです。
 李亮はすでに公安当局に身柄を確保されています。習近平国家主席の出方によっては、李瑞環、張高麗の両氏への追及が始まるかも知れません。というのは、とりわけ、張高麗は、いま習近平王岐山の反腐敗キャンペーンの標的にしている江沢民に近く、張高麗を追い詰めることは江を追い詰めることにもなるからです。
 天津市の爆発事故は当初、国家安全生産監督管理総局の楊棟梁局長が現場に出張り、指揮を取っていました。しかし、彼は天津市の副市長や国家資産管理委員会主任を務めるなど天津市幹部出身であり、自身が同市の汚職構造にかかわった可能性が大。そこで、党中央はきのう18日、楊棟梁の指揮権を取り上げ、国務院公安部の楊煥寧常務(筆頭)副部長をトップとする新たな調査チームを成立させ、捜査に当たらせています。
 楊棟梁は江沢民の懐刀であった曽慶紅元国家副主席系の人物とも言われ、半年前から規律検査委員会の調査対象になっているとの説もあります。複雑怪奇、魑魅魍魎、何がどうなっているのか判然としません。でも、中国の調査、拘束、逮捕というのは権力側の恣意的な判断でなされるものですから、習近平がこの事故を奇貨としてどこまで権力闘争に利用するのかが見ものです。

 上の写真は、我が家の愛犬マオ。