つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

中東の国ではやはり独裁が必要なのか

 今年のノーベル平和賞北アフリカチュニジアの「国民対話カルテット」という民間組織に授与されました。チュニジアは、2010年から始まったアラブ諸国民主化運動が最初にあった国で、国民が独裁者ベンアリ政権を倒し、いわゆるジャスミン革命を成就しました。この動きは、その後エジプト、リビア、イエメンと続き、現在シリアにまで至っています。そういう意味では、チュニジアの革命は大きな意味があり、今回の受賞の理由になったと思います。
 チュニジアに革命が起きた当初、小生はそれほど大きな関心がなく、国民対話カルテットなる組織も知りませんでした。ですが、独裁より民主化というのは無条件にすばらしい政体だと思っていますので、チュニジア革命の成功を祝福したし、それがエジプトのムバラク長期政権の崩壊に結び付いたことも歓迎しました。
 ただ、その後のリビアカダフィ政権つぶしは内戦に発展し、政権崩壊まで長くかかってしまい、欧米の介入が必要だったし、今、シリアのバッシャール・アサド政権つぶしも先の見えない内戦状態が続いています。リビアカダフィが倒れたあとまともな民主政権ができているのかと言えば、そんなことはなく、いまだに準内戦状態です。エジプトもムバラク時代と同じく軍人政権に戻ってしまいました。
 シリアはもっとひどく、反政府勢力の中にイスラミック・ステート(IS)やアルカイーダ系のヌスラ戦線のようなならず者集団が出てきて、今や3つどもえ、4つどもえの構図にもなっています。しかも、シリアの各勢力には欧米、ロシアなどがそれぞれ支援し、落としどころ(最終決着の在り方)がまったく見えない状態になっています。
 そこで、小生は今、国際関係論の授業の中で、民主化が無条件にいいという言い方ができなくなってしまいました。米国の共和党大統領候補を目指すドナルド・トランプ氏は「中東でカダフィサダム・フセインなどを倒したから、混乱が続いているのだ」などと独裁を認めるような発言をしていますが、今のシリアなどの混乱を見ると、なんとなく彼の発言も分かるような感じもあります。
 中東のような部族中心の社会、政治的熟成度が低い国ではやはり民主主義は無理なんでしょうか。チュニジアでうまくいったからと言っても、他の国でうまくいくとは限らない。でも、民主主義を否定すると、今、独裁国がはびこる北東アジアの政治的な状況を正当化しなければならなくなりそうで、それも嫌だし、怖い感じがします。悩ましいところです。

 上の写真は、新橋の行きつけの中華料理店に行って「杏仁豆腐」を頼んだら、出てきた魚の形の杏仁豆腐。手がつけにくいほどの素晴らしい形でした。