つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

トルコのロシア軍機撃墜はやり過ぎだ

 先日起きたトルコ軍によるロシアの戦闘機撃墜事件。イスラミック・ステート(IS)への総反撃を必要とするこの時期にどうしてこのような団結に冷水を浴びせるようなことが起きるのか、理解に苦しみます。トルコのエルドアン大統領は「この事件を本当に悲しんでいる。起きなければよかった」と言っているほどだから、政治的な背景のない、現場の判断での”過剰な反応”ということなのかも知れませんが、それにしても残念な事件です。
 ロシア軍が現在、シリアのISなど反政府勢力をたたくため、戦闘爆撃機をシリア上空に飛ばし、巡航ミサイルも撃っています。ですから、戦闘機が国境を接するトルコ領内にいささか入ってしまうのは避けられません。トルコはISやシリア政府軍との敵対関係で神経質になっているとはいえ、”準同盟軍”の領土侵入を鬼の首でも取ったように、警告まもなく撃墜に出るというのはとても尋常の沙汰ではないでしょう。
 トルコもロシアも今、ISへの攻撃を強めています。立場が違うところは、ロシアがシリア政府を擁護しているのに対し、トルコは反シリア政府の立場。トルコはこの地域に散在するクルド人に対し抑圧姿勢に出ているのに対し、ロシアは彼らに特別な感情を持っていないことです。でも、ISに対して言えば、トルコは自爆テロ事件を起こされており、ロシアもエジプトで旅客機を爆破されているので、同じ立場にあります。プーチンは「仲間に後ろから切り付けられたようだ」と言っていましたが、その通りでしょうね。
 もし、この事件がトルコ政府の指示だとしたら、政府は何の生産性のない事件を起こしたことになります。実は、トルコは自国のエネルギーの半分以上をロシアに依存している国で、ロシアが供給ストップすれば、冬を迎えて極端なエネルギー危機に陥ってしまいます。トルコに来訪するロシア観光客も大勢います。プーチンは実際に経済制裁の動きに出ました。経済的、生活的にトルコはかなりのマイナスを被ることになります。
 トルコはロシアと黒海を挟んで隣国同士ですし、歴史的に仲の良い関係ではありません。19世紀には南下する帝政ロシア軍とクリミア戦争露土戦争を戦っていますし、日露戦争バルチック艦隊を破った東郷平八郎は今でもトルコで尊敬されています。それだけトルコ国民は無前提にロシア嫌いなので、今回もそういう感情が先走ったのでしょう。
 でも、撃墜を命令した現場の指揮官はあまりにも世界情勢が読めないお粗末な人と言えるでしょう。トルコはNATOの一員なので欧米も集団安全保障から共同でロシアに対抗すべきところですが、これまでのところ対応に苦慮しているようです。トルコのやり過ぎが原因です。


 上の写真は、深夜特急サンライズ出雲」が横浜駅に進入してきたときと、明け方サンライズ出雲から見えた鳥取の名峰大山の風景。