つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

香港の言論の自由が危うい

 昨年末に香港にビジネストリップした際、立ち寄った有名書店「天地図書」で、いわゆる大陸の政治内幕、暴露本がほとんどないことに驚き、それについて小生はブログで、そのような本を買う大陸客が来ていないのか、あるいは香港人自体が大陸の政治内幕などに興味を示さなくなったのか−などと随分ノー天気に分析していました。今となっては恥ずかしい。これは飛んでもない筋違いな見方でした。
 香港では中共中国共産党自身がそう表現する)の政治的、物理的圧力があり、そうした大陸の政治内幕、暴露本が置けなくなってしまったのですね。香港への出発以前に、同地の反体制派の書店の店主が行方不明になっているという情報は知っていました。しかし、「天地図書」や「三聯書店」など大型店も含めて、今香港の書店は、こうした本が置けなくなっているというところまでは思いが及びませんでした。
 香港は「一国二制度」「50年不変」「高度自治」などと返還前は体裁のいい言葉が並べられました。しかし、今、大陸の批判本、暴露本など言論、表現の自由に関する書物は許されないようです。反体制派の銅鑼湾書店に関わる店主ら幹部が昨年10月から年末にかけて行方不明となり、大陸に連行されています。そんな本を陳列する書店の店主は許せん、大陸に拉致してお仕置きするという姿勢のようです。
 日経はきょうの社説で「香港の言論の自由が危うい」という見出しで、この書店行方不明事件を取り上げ、香港の言論の自由に対する危機を訴えています。アプリオリ言論の自由を享受している日本では考えられないことですが、これが「50年不変」という言葉に酔って中国の一部になった香港の現実です。中国の公約違反に西側諸国は厳しい目を向け続けなければなりません。
 それにしても、返還後20年にもならないうちに中共は香港を大陸と同化させようと必死ですが、なぜそんなに焦っているのでしょうか。大陸内に中共一党独裁に対する不信感が増大していると自覚し、恐らくその不信感は香港で醸成され、大陸にもたらされているとの認識があるからかも知れません。毎年6月4日夜、香港ビクトリア公園で開催される6・4記念集会では、香港に観光で来ている大陸客も大勢参加しています。香港の”自由の空気”が大陸に入っていることは事実でしょう。
 返還前、ある香港の知識人は「50年不変なんて要らない。50年も経たないうちに大陸自体が香港化、つまり自由化するのだから」と豪語していました。あと30年でどうなるのだろう。今は中共の圧力で、香港は大陸化という危機を迎えているけど、やがて大陸を香港の”自由な空気”で席巻できるのでしょうか。そう願っていますが、、。


 上の写真は、香港の繁華街・灣仔の夜の風景。「Sasa」は香港の有名化粧品チェーン店で、いつも女性観光客でにぎわっています。