新聞を読んでいたら、面白い記事が出ていました。奄美大島で農地にいる毒蛇ハブを退治するため、外来動物であるマングースを島内に持ち込んだところ、今では繁殖しすぎ、今度は彼らが農作物を荒らすため困っているとのこと。そこで、地元自治体ではマングースの数を減らすため、殺鼠剤の毒入り鶏肉をまき散らし、これで生息数の減少を図っているそうです。
小生は1970年代、初めて沖縄に行ったときに、何かのショーでハブとマングースの戦いを見たことがあります。当時でもハブにマングースをかませる話は有名。マングースは結構機敏に戦い、ハブの毒を受けることなく、強力な牙でやっつけてしまったのです。かわいい顔をしている割にはなかなか獰猛な動物なんだという強烈な印象が残っています。
ただ、農地近くにまき散らす殺鼠剤入り鶏肉には難点があります。それは、必ずしも野生のマングースだけがその鶏肉を食べるわけではないということ。天然記念物になっているような貴重な動物までがこれを餌にし、殺されてしまいます。自治体はその辺のところをいちばん心配しているようです。
この記事を見て、何だか国際政治のことを考えてしまいました。中東の民主化の流れ、アラブの春の延長でシリアでも独裁者バッシャール・アサド政権を倒すための内戦が始まりました。アサドをハブだとすれば、反体制勢力はマングースです。ハブが困り者であることは万人が承知のことなので、国際世論は最初、押しなべてマングース贔屓になりました。
ただ、マングースがハブだけに向かっていれば、それは結構なことなのですが、マングースの中にイスラミック・ステート(IS)のような極端な乱暴者が現れました。戦いの矛先をアサド政権に向けず、自らが一定地域を支配したのち、住民の虐殺、略奪を始めたのです。まさに、マングースが農作物を荒らすのと同じような構図です。
こうなってくると、民主化支援の欧米もISに対し黙っているわけにはいかないのです。まさに、欧米諸国イコール奄美大島の自治体ということでしょうか。ISの駆除に乗り出さざるを得なくなりました。でも、ISを駆除すればアサド独裁政権は倒れず、存在し続けます。奄美大島のケースで見れば、またまたハブが跋扈し、農作業の農民を苦しめる事態になってしまう。まさに痛し痒しです。
こういうケースはわれわれの日常生活でも見られますね。よく病院で抗生物質を処方されますが、この抗生剤は必ずしも病原菌だけを殺すのではなく、人間の体の正常な働きを促進する好ましい”菌”をも殺してしまうのです。ですから、インフルエンザ・ウイルスを殺すため抗生物質を呑むと、しばらく体調不良のこともあります。
マングースとイスラミック・ステートと抗生物質。何だか関係ないように見えますが、いずれも両刃の剣であることに変わりない。物事にはプラスマイナスの両面があり、現時点でどちらが大事かという点を見極めないといけませんね。
上の写真は、自民党の観桜会で見かけた菅義偉官房長官。有名人ですから、一緒に写真を撮りたがる人が引きも切らない感じでした。