つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

EU離脱も離婚と同様、簡単ではない

 巷間言われていることとして、離婚は結婚の5倍のエネルギ―を必要とするという話があります。確かに、男女が深い関係になり気持ちが高ぶっていれば、生活に必要なものを持ち寄ったり、新しく買ったりして、いわゆる所帯を持つのはそれほど難しくないのです。が、離婚時、長い間生計を共にして一緒くたになった財産や義務その他を冷めた関係の中で分けようとすれば、これは容易なことではありません。今、英国はEUからの離脱交渉を進めていますが、やはり相当のエネルギーを要しています。
 英国は昨年、時の勢いでEUからの離脱を決めました。同盟内にいると、多額の分担金を取られる上、工業、農業分野で生産額などの枠をはめられたり、労働者受け入れを求められたりします。つまり、政治、民生、経済、金融のあらゆる分野で一国家がEUの制度に縛られ、自主的に運営できないところがあります。栄光ある歴史を持つ英国民にとって、こうした制約は我慢できなかったのでしょう。
 メイ首相自身は、キャメロン前首相と同様にEU分離に賛成でない保守党本流の政治家です。ですが、国民投票でいったん方向を決めた以上、速やかにそれを推進しなければなりません。それで今、英国はEU側と離脱条件をめぐって交渉をしていますが、どうも難航している様子です。まあ夫婦の離婚で言えば、財産分与や子供の養育費など事後の処理に関する話し合いをすることと似たところがありますね。
 EU離脱における英国の清算金、つまり分離後もEU予算の一部を担う金の件ですが、これは2020年までに600億ユーロ程度という額でおおよそ決着がついているようです。分かれたとはいえさまざまな義務が残ります。まあ、夫婦の離婚で言えば、例えば子供の養育費を誰がどう払うのか、住宅の所有者、ローンをどうするかなどでしょうか。
 問題は、英EU間の今後の物流をどうするか。英EU間に新たに”壁”ができるわけですからFTA自由貿易協定)を結ばなくてはなりません。その中で、英国はこれまでの誼みから他国とは違う「恩恵(特別待遇)」をEU側に要求しています。つまり、「うまみ」を残して「嫌なところ」は捨て去りたいと思っています。でも、EU側はそんな甘えを許しません。「義務」の履行を強く求めています。
 英国はこれまで無条件で介入していたEUという大きな市場を失うことになったのです。国民投票のときに、選挙民はデメリットばかり見て「EUにいては損」とばかり考えてしまった。けれども、物事には裏表があって、よくよく考えれば「得」なことも多いのです。今では、EU分離を後悔している英国民も多くいると聞いています。国民投票も一回限りでは、長期的な視野に立った本当の国民の意思は反映できないのかも知れません。


 上の写真は、今年もクリスマスシーズンを迎えてサンタクロースの服を着た市川の石造の犬。