つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

ブレグジットは不透明感が増すばかり

 英国がEUから離脱する、いわゆるブレグジットの先行きが不透明な状態になっています。メイ首相が示した離脱協定案が国会で通りません。もともと国会議員の多くは離脱に反対でしたから、そうなることは予想できました。物事には新しく何かをするとプラスとマイナスの両面があります。多くの人はプラスの面ばかりを見て、マイナス面を軽視しがちです。このブレグジット国民投票もその通りになりました。

 EUから離脱すれば、同盟への膨大な分担金を払わなくてよい、域内後進国から単純労働者が流入しない、工業製品の生産や農産物、水産資源の捕獲などは域内調整せず自国の自由になるというメリットがあり、それらは魅力的です。でも生産や捕獲の枠組みは、EU内で関税など関係なく自由に物品の移動ができることが前提になっているからで、離脱すれば、すなわち生産は自由になるけど、EU諸国への物の移動は不自由になります。

 英国民の多くは、権利と義務が裏腹の関係にあることを理解していなかったようです。それで、2016年の国民投票のときには、熱病に取りつかれたように離脱賛成が多数を占めました。でも今年、離脱が間近に迫ると、マイナス面がクローズアップされてきて、「やはりまずかったのではないか」と思う人が出てきたようです。

 一番の大きな問題は、アイルランドと地続きである北アイルランドとの境界をどうするかということ。北アイルランドは民族的にも、宗教的にも英国の中でも異質で、そのために長い間、英国からの分離独立運動があり、IRAアイルランド共和軍)の武力闘争も起きていました。同じ民族同士のアイルランド国との境界線はなく、事実上出入り自由で、それが分離独立運動の熱を冷ましていたところがありました。ですが、ブレグジットでこの自由な境界線はなくなります。となると、再び英国からの分離独立運動が再燃する可能性もあります。

 メイ首相は、離脱に伴うプラス面をなるべく残し、マイナス面を少なくしようと交渉していましたが、EU側はそんな勝手は許さないという構え。それで、首相は再三独自の離脱協定案を国会に提示しましたが、いずれも否決されてしまいました。もともと離脱反対派が多い国会議員たちもどうしていいか分からないのではないかと思います。EU側に離脱時期を6月まで延期させてくれとお願いしていますが、それは問題の先延ばしに過ぎない。首相、国会とも袋小路に入っています。

 どんな解決策があるのか。同盟との合意なしの離脱となれば、英国は人の往来の制限を受け、関税がかけられ、かなりのマイナスとなります。メイ首相は6月のぎりぎりの離脱期限までに離脱案を通せないのであれば、最後の手段として、自分の首と差し替えに、もう一度国民投票で是非を問いたいという政治判断をするのではないでしょうか。もう一度国民投票すれば、離脱反対が多数を占めることは確実。となると、この3年間の混乱はなんだったのかという話になってしまいます。

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 上の写真は、JR上野駅中央口構内にあるパンダ。