つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

健全な精神が宿らぬスポーツマン

 カヌー競技で2020年東京オリンピック出場候補選手の一人がよりにもよって選手仲間の飲料用ボトル内にドーピング禁止薬物を入れ、陽性反応を起こさせて選手出場させないよう狙った事件が発生しました。ダジャレ的に言えば、「他人(ひと)を殺(や)らねば、届カヌー思い、東京五輪」ということでしょうか。スポーツとはそもそも健全な精神のもとで最大限自らの力量を高め、発揮する、そういう形で選手同士が切磋琢磨していくものと小生は思っていましたが、中には屈折した選手もいるんですね。
 この事件で面白いと言っては失礼ですが、興味を持った点は、カヌーなどというおよそ注目度の低いスポーツ種目でも、東京五輪に向けて激しい鍔迫り合いが演じられており、世間的には名もなき選手たちが出場チャンスを勝ち取ろうと必死になっていること。でもこれは半可通の第三者の視点であり、当の選手たち本人にしてみれば、青春を捧げた一大事であり、オリンピックに出場できるかどうかは人生を掛けた争いなのでしょう。
 2つ目の注目点は、同じ目標に向かって突き進む仲のいい選手同士でも、我活你死(生きるか死ぬか)の状況が出現した時にはやはり自分を中心に考えてしまんだなということ。本来、潔さを求められるスポーツ界ですが、今回の主役鈴木康大選手は、スポーツマンシップより激しい自己欲求、達成願望を優先させました。人間の弱さであり、ある意味すごく人間臭さを感じさせます。
 ちなみに、小生がスポーツ(空手)をやっていた青春時代、自分の非力をカバーするため、他人を意図的に不利な状況に追い込もうとする発想は微塵も生まれませんでした。まあ、スポーツに人生をかけていたわけでなく、単なる余暇の運動程度ですから、オリンピックを目指す選手とはレベルが違いますけど。
 3点目は、陰で他人の飲料用ボトル内に禁止薬物(筋肉増強剤メタンジエノンと言うらしい)を混入し、ドーピングチェックで陽性にさせようとしたこと。なにかねちねちした陰湿な”犯罪手口”ですが、この手の事件は一般社会では結構よく起きていますね。他人の飲み物に毒性薬物を入れたり、食品の中に異物を混入させたり。病院で点滴液に別の薬剤、異物を混入した事件もありました。ですが、およそ健全な精神が宿るべきスポーツマンには考えられそうにないやり口で、小生には驚きでした。
 この事件、最終的には”犯人”鈴木選手本人の自白によって明らかになりました。もし、それがなかったら小松正治選手は被害者であるにもかかわらず、濡れ衣によって出場停止処分が続いています。そればかりか、世間から「ドーピング野郎」などと後ろ指を差され、事実上選手生命が絶たれる事態になっていたかも知れません。ですから、記者会見で小松選手は、鈴木選手を非難するよりむしろ感謝の気持ちを強調しており、小生にはそれがすごく印象的でした。
 その意味で最大の注目点は、犯人の自白がない限り、この種事件の解決ができなかったこと、客観的、システム的にこの種事件発生を防ぎ切れないということです。競技の場や合宿所、選手同士の関係は性善説に基づいているので、監視するようなシステムは作りにくいでしょう。などと考えると、今後のスポーツ界全体の大問題であるのかも知れません。

 上の写真は、三軒茶屋の友人宅で飲んだときのワンショット。女性が抱えているのが太宰府天満宮菅原道真公縁りの「菅公の酒」。友人が郷土の産として強く推奨し、飲んでいる銘酒。