つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

高校野球投手に一定休養は必要なのか

今年の高校野球は100回記念大会ということで話題になりましたが、とりわけ記念大会にふさわしく公立高校が活躍したのは、嬉しいことでした。エリート野球少年の集団、プロ野球選手の養成学校のような私立高校野球部が跳梁跋扈するより、小生も小中が市立、高校が県立とずっと公立で過ごしてきたので、シンパシーを感じます。
それはともかく、その秋田県金足農業高校が甲子園の決勝戦まで行けたのはエース、吉田輝星君の活躍があったことは疑いありません。ただ、今夏は尋常ならざる暑い夏であり、こんな時に炎天下で連投させるのはいかがなものかという議論が起こりました。そうかもしれません。吉田君は県大会の5試合、甲子園の6試合目(決勝戦)途中まで、11試合のマウンドで合わせて1517球を投げ込んでいたというのです。
昔なら根性ものの美談で、「吉田はよく頑張った」とほめそやされるのでしょうが、今は必ずしもそうならないのです。米国では今、投手の球数制限がかなり厳しく言われています。小生、この球数制限というのを初めて耳にしたのは、最初のWBCの試合でした。それまで投手は先発完投がすばらしく、そうでなければ一流とは言えないと思っていました。が、今は9回投げるのは酷使、先発は100球未満、できれば5、6回で終わり、あとは中継ぎ、抑えに任せる分業態勢がいいと言われています。
でも、高校野球は相変わらず一人の投手に頼る傾向があります。大阪桐蔭のようなプロ野球養成校の野球部は素晴らしい選手が何人もいるので、分業態勢が可能ですが、選手層が薄い公立校では無理でしょう。金足農も吉田君に頼り切りで、甲子園だけでも6試合に881球投げたとのこと。身体はすでに限界を超えたことでしょう。現に、彼は決勝戦中盤で「もう投げられない」と初めて弱音をはいたそうな。口に出すくらいですから、本当に辛かったのだと思います。
テレビのワイドショーでも指摘していましたが、甲子園で決勝、準決勝までの5、6試合を一人で投げ切った投手というのは、その後肩を壊したりして、プロ野球に入っても大活躍はしていません。活躍しているのは、メジャーリーグまで行った松坂大輔ただ一人です。そういう意味では怪物なんでしょうが、大例外でしょうね。
では、高校野球の投手にも球数制限や休養期間の強制割り当てが必要なのか。それはそれで問題です。なぜなら、そういうシステムにしたならば、選手層の厚いプロ野球養成校が有利になってしまうからです。ほぼ吉田君一人に頼った金足農は甲子園に来られません。であるならば、同一チームの試合間隔を最低4、5日空けるとか、炎天下の負担をなくすため、試合を早朝か夜間に限るとか、いっそのこと空調の効いたドームなどを会場にするなどの方法も考えられます。
でも、ひとチームの試合間隔を延ばすとなると地方大会まで含めればかなり長期間になり、ひと夏では終わりません。早朝、夜間の試合では観客動員やコスト面で障害が出てしまいます。ドームなら大阪ドームとなるのでしょうが、それで高校球児が納得するのか。「甲子園を目指す」という彼らの合言葉はなくなってしまいます。一人の投手を酷使させないというのは総論としてだれもが賛成でしょうが、ではその具体策はと問われると、なかなか良い方法は出てきませんね。難しいテーマです。

上の写真のお二方はかつて小生も参加していた勉強会の仲間、久しぶりに居酒屋でお会いしました。美人は歳取らない。