つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

不動産屋トランプに世界戦略思考はない

  ドナルド・トランプなる人、日本にとって本来頼りにすべき同盟国のトップなのですが、いまいち頼りにできるような感じが持てません。現在進行中の日米首脳会議を見ても、日米の貿易面の話し合いが中心で、戦略面での話し合いなどまったくと言っていいほどないようです。本当にこの人、米国の大統領なの、世界最大の覇権国のトップとして自由主義国家群を率いるリーダーなの、と疑ってしまいます。

 トランプ氏、長く大統領をやっているように見えますが、まだ就任から2年3カ月ほどで、任期の半分を超えたばかりです。印象が強いのは、ある意味、それだけ存在感があるから、良きにつけ(?)悪しきにつけ、目立つからでしょうね。現在進行中の対中貿易戦争は、中国の勢力拡大、台頭を抑えるという世界戦略に基づくものであったら、最大覇権国の行動として認めることはできます。でも、トランプ個人の発言を聞く限り、とても戦略思考があるようには思えません。

 本来、共同歩調を取るべき同盟国のEUや日本に対しても、貿易面で厳しい要求を出しているからです。農産物輸入に厳しい姿勢を取るEUに対し、航空機や鉄鋼の米国輸入などで報復関税を課す構え。その上、NATO、軍事防衛面でも、EUは負担額が少なすぎると文句を言っています。まったくEUに対するのと同様に日本に対しても、貿易不均衡問題を大きな議題にし、農産物の輸入拡大を迫っています。今後、防衛費に関しても、「GDPの1%程度の負担額では少ない」とばかりに負担増も迫ってくるでしょう。これは政治家でなく、そろばん勘定だけの経済人の発想です。

 トランプには戦略眼がないと小生もかねがね思っていたら、フィナンシャル・タイムス(日経掲載)で、ジャナン・ガネシュというコメンテーターも「トランプにとって、中国への不満の種は極めて少ない。問題は基本的に貿易だけだ」「民主主義と一党独裁体制のせめぎ合いなどにはまったくと言っていいほど関心がない」と書いていました。この評論を要約すれば、トランプは、貿易不均衡さえ解消したら米中間に対立要因はない、中国が自由と民主主義から程遠い国であっても、そんなことはどうでも良いと思っているということでしょう。

 そうだとしたら、世界に自由と民主主義の思想を広め、その政治体制を守るという米国のリーダー国たる矜持はどうなってしまうのか。1980年代のドナルド・レーガン大統領は三流俳優上がりとはいえ、西側同盟国を引き付ける見事な手綱裁きを見せました。当時のソ連を「悪の帝国」と呼び、戦略防衛構想(SDI)などを打ち出して独裁体制崩壊へ向けて尽力し、結果として崩壊を実現させました。米国民、いや西側諸国の期待以上の成果を上げ、歴史に名を残しています。

 トランプが、歴代大統領に見られないような経済人、いや不動産屋さんだけの発想で米国をリードしていくとしたら、頼りにしてきた多くの国は失望するし、期待もしなくなります。長い目で見れば、米国にとってトランプ時代は「恥ずべき時代」「暗黒の時代」ということになりましょう。という意味で、トランプは早く辞めてほしい。表面的でもいいから、米国一国の経済的価値より、政治的な価値観を高らかにうたい上げる大統領が出てきて欲しいと思います。

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上の写真は、友人を訪ねて出かけた対中国投資商談会の会場で見掛けたクマモン。中に人が入っていないぬいぐるみ。