つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

年金だけで老後暮らせると思う人は皆無

 夫婦の老後の安定した生活には年金だけでは不十分で、さらに2000万円が必要だとする金融庁の審議会の報告書に対し、驚きの反応、さまざまな意見が出されました。参院選を前に影響の拡大を恐れたのか、麻生太郎担当大臣が報告書を受け取らないという、前代未聞の対応に出ています。2000万円不足をことさら強調して報じるメディア、奇貨として政争に利用しようとする野党にいかがわしさを感じると同時に、頼んでおきながら報告書を受け取らないという麻生氏の態度も噴飯ものというより情けなさを感じます。

  昔、坂口厚労大臣が「年金は100年安心」と言ったけど、これは年金制度は崩壊しないと強調しただけで、別段、年金だけで十分な生活が送れると言ったわけではないと思います。今回、特にマスメディアは驚いた様子で報じたけど、では驚いた方々に聞きたい、「じゃ、あなたは本当に年金だけで老後を暮らせると思っていたの」と。メディアに乗じて野党までが鬼の首でも取ったみたいに「100年安心って言っていたのになんだ」と責め立てていますが、尋常さを欠いています。

 審議会の報告によれば、一般的には、95歳までまあまあの生活を送るには毎月5・5万円ほど不足すると言っているに過ぎません。老後の生活の安定には、その生活レベルによって資金の需要度が異なりますので、あらゆる人に共通の需要額を議論するのは意味のないことですが、2000万円という数字が出たことで、その数字が独り歩きし、世間は驚いたようです。でも、小生の友人らから本音を聞けば、だれだって年金だけで老後が送れると思っている人はいません。

 アリとキリギリスという寓話があるけど、自営業でなくサラリーマンであれば、アリが冬の食物を穴倉に蓄えるように、将来、定年後や仕事を失うことを想定し、金銭的にその備え、手当をしておくのは常識です。事実、額はまちまちでしょうが、ほとんどの人が年金以外に蓄えを持っていることでしょう。ですから、老後に年金以外の金が必要だと言われて、今さら「えー」なんて感じで驚く人はそういないと思います。

 問題は、2000万円という額への印象です。これは、その人の生活水準や生活感、さらには蓄えの額で変わってくるでしょうから、一概に言えません。第一、95歳までという条件設定が微妙。癌を患ったのに今でも結構な酒を呑む小生などは、95歳まで生きるなんてとても無理な話で、この一点だけでこのモデル的な数字からはかけ離れています。定年後、たとえ70歳を過ぎても、健康であれば働くこともできるし、支出ばかりでなく収入を得る人もいる。ですから、メディアや野党が2000万円不足を強調し過ぎるのはやり過ぎだと思います。

 一方、麻生大臣が審議会に検討をお願いしながら、報告書の受け取りを拒否したのには驚きました。これは麻生氏個人の判断というより、政府、自民党がかつての消えた年金問題と同じような参院選への影響を恐れて、事態の冷却化を図る意図があったのでしょう。愚かな判断です。こんなことをすれば、野党側が言うように、今後、さまざまな審議会が政治家や省庁に忖度する報告書ばかり提出することになってしまいます。悪影響が大です。

 受け取りを拒否しても事態は冷却化されません。却って、参院選で野党側はこの問題を取り上げ、攻撃してくるでしょう。小生思うに、むしろ報告書の内容は静かに受け止めた上で、「必要額は個人差がある。金のかからない生活の在り方は探るべきだ」とか、「金のかからない老後の憩いの場を提供する」などと強調するほか、老人が働ける場の整備など積極的な策を訴えるべきです。

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上の写真は、5月3日の開港記念日パレードに登場した電気自動車。