つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

舞の海と炎鵬、小兵でも攻め方に違いがあるんだ

 先日、大相撲秋場所中継にスイッチオンしたら、ちょうど十両と中入りの取組間のブレーク中で、解説者の舞の海宮城野部屋の炎鵬を訪れ、対談したところを流していました。かつてと今の小兵力士同士を対談させるなど、なんと粋なことをやるものかと、NHKの企画に感心しました。で、話を聞いてみて、実に面白かったです。技術論が主だったのですが、一概に小兵と言っても、人それぞれで、技のかけ方も違うんですね。

 舞の海も炎鵬も基本的には左四つなのですが、大男とがっぷり四つに組んでも勝ち目はない。そこで、相手の懐に潜り込み、左下手を取って食い下がる。右側は胸を合わせないように半身(はんみ)になるのは共通です。でも、そのあとに2人の違いが出ます。舞の海が言うには、彼は左手を深く差して、タテミツかさらにその先のマワシを取り、体を相手の腰に密着させ、下手投げを狙う。でも、いつも下手投げでは相手は警戒し、重心を後ろに移すから、逆に切り返しのような形で後ろに倒すこともあったようです。

 一方、炎鵬は、左下手を取っても深く差さないで、むしろ前みつを取る感じ。体は密着させないと言うのです。相手の体との間を開けておけば、右手を相手の手か腕に絡ませ、ひねり(相手を前にねじ曲げる形)を繰り出すこともできる。下手投げを打つふりをしてひねったら、確かに相手は崩れやすい。つまり、2人の小兵力士の違いは、舞の海は相手を前後に揺さぶるタイプだが、炎鵬はどちらかというと左右に揺さぶるという技のかけ方なんですね。

 それから、小生の昔の印象で言えば、舞の海は足技が巧みで、よく外掛け、内掛けを繰り出していました。一方、炎鵬は足技より、手で相手の足を取る小股すくいとか、足取りのような技を多用しているように思います。これって、同じ小兵ながら、身長170センチ以上で体重も100キロ以上あった舞の海と、160センチ台で100キロ未満の炎鵬との微妙な「がたい」の違いなのでしょうか。

 いずれにせよ、テレビの中で、小兵2人が実際に組み合い、「僕はこういう四つの取り方をしていた」などと説明し合っていたのは、実にほほえましかったし、楽しかった。炎鵬は投げの打ち方などで舞の海のビデオを見て参考にしたいみたいなことを言っていたけど、確かに、投げはタイミング、体の開き、腕の使い方など奥が深い。技術論なんて興味ないと言う視聴者はいるのかも知れないが、小生は舞の海ー炎鵬対談が今後大相撲を見る上で大いに参考になったので、こういう企画はぜひ続けて欲しいと思っています。

 例えば、土俵際の裁きがいい、立ち合いに変化をする、吊り寄りが得意、肩透かしがうまい、押しや突きが専門であるといった力士同士がその極意を語り合ったりしたら、どうでしょうか、受けると思います。ゼーゼーハーハーしながらで、ほとんど内容のない勝利者インタビューや、新十両、新入幕者のインタビューなどよりも、よほど見たくなるコーナーです。

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 上の写真は、9月初め、五反田のROCビルで行われた展示会の風景。