つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

「越後屋、そちも悪じゃのう」の世界が今もあるなんて

 

 「お代官さま、これはささやかなお礼ですが、、」「ほう、越後屋、あの一件でしこたま儲けたようじゃのう。・・そちも悪じゃのう」「いやいや、お代官さまほどでは。ウォホ、ホ、ホ」などと、互いににたついた会話も想像できそうなのが、今回の福井県高浜町の元助役と関西電力幹部とのやり取りの一件です。菓子折りの底にゴールドを忍ばせて相手に贈るなどというのは時代劇の話だけだと思っていましたが、現代でもある芸当なんですね。本当に驚きました。

 小生は記者出身なので、およそビジネス上の賄賂とは無縁でしたが、昨日、ある会合でその件が話題になった時に、大企業の退職者が、今でも金目のものを贈答品に忍ばせることはありますよと言うのです。それは、現金なのか、それとも黄金の板か延べ棒かは分かりません。でも、貰った方は、菓子折りにしてはちょっと重いと感じ、これは明らかに何か”余計なもの”が入っていると感じますから、賄賂性は十分に認識して受け取っていることでしょう。

 いや、山吹色が入った菓子折りというのはあまりにもストレート過ぎる。現代では、もっと巧妙な賄賂の形があるに違いありません。自分の息のかかった企業を一見分からない形で公的な事業に絡ませるとか、第三者の銀行口座に調査費、協力費などの何らかの経費として振り込ませるとか。昔、取材の中で、中国の幹部が子弟を海外に留学させるときに、関係企業に現地で世話をさせるという話を多く聞きました。遠い海外の話であり、しかも便宜供与の形が分かりにくいので、よく使われるパターンです。

 今回、町役場助役からリタイヤして民間企業にいる町の顔利きが、関西電力幹部に金品を送ったという構図。元はと言えば、関電が高浜町原発を造り、口止め料その他の理由で大量の資金を同町に流して、くだんのボスの企業も潤わせたという背景があります。早い話、関電が電気代として広く利用者から徴収した金を高浜町に流し、その金が当該ボスを通じて回りまわって関電幹部に還流されたもので、関電幹部が利用者の金を横取りしたと言っても過言ではないでしょう。

 一般の民間企業同士ならそれほど問題にはならないのでしょうが、こと公的な機関、地域独占的な企業が絡むとなるとわれわれも無視できません。電力会社は鉄道、通信、ガス、NHKなどと同様に、民間であっても非常に公益性の高い企業体です。本来なら”みなし公務員”とし、刑法の贈収賄罪が適用されていいのかも知れません。ただ残念ながら、実際はそこまで行くのは相当なハードルがあり、贈収賄罪は難しそうです。結局、特別背任罪などでしか罪科は問えない感じです。

 亡くなった人を非難するのはためらいがありますが、高浜町元助役なる男、原発という”厄介者”の存在を奇貨として私腹を肥やすなど言語道断、許されざることです。なんでこんな男の跳梁跋扈を許してしまったのか。管理能力がない町長が問題ですし、恩恵を受けたために黙っていた町民も問題です。関電幹部も記者会見で、被害者ズラをしていたけど、事件の元凶は彼らでしょう。誰かが言っていたけど、テレビに映った関電の幹部たち、特に社長、関西経済界をリードすべき企業のトップにしてはすこぶる品のない顔でした。思わず、着物姿で行燈を前に、こそこそと「越後屋、そちも悪じゃのう」のセリフを言わせてみたくなりました。

f:id:higurashi-takanori:20191006165217j:plain

f:id:higurashi-takanori:20191006165239j:plain


 上の写真は、品川プリンスホテルの階上レストランから見た風景。