つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

都市封鎖とはまた思い切った措置を

 中国武漢市が発生源のコロナウイルス肺炎は、アジア各地に広がる気配を見せ、パンデミックを思わせる状況になっています。当の中国では、最近になって、習近平国家主席が「隠さないで、徹底した防疫対策を取れ」と指示したせいか、都市封鎖などの極端な措置も取られました。1100万人もいる都市を封鎖して住民を外に出さないようにしているのは、感染の拡大を恐れるその他地域の人には結構なことでしょうが、武漢現地にいる人はたまったものではない。特に、食糧の不足が起きているようで、生死にかかわる事態になっています。

 1990年代に中国、香港、台湾などで鳥インフルエンザが流行した時に、小生は香港で取材活動をしていました。この時、香港でニワトリが大量に処分され、レストランで鶏料理がなくなったりと大騒ぎでした。でも、救いであったのは、鳥インフルが鳥から人には感染するものの、人から人への感染はなく、大規模な感染には至らなかったこと。もし、人から人への感染があったら、大量の患者発生の事態となり、われわれも相当長期間の取材を余儀なくされたことでしょう。

 次いで、記憶に新しいのは2003年にはやったサーズ(Sars新型肺炎)。この時は当初、中国は流行を公表せず、うそ情報を流し続けていました。それに怒った北京の良心的な医師が暴露したのですが、それでも当局はうその上塗りをし、暴露した医師を追放してしまったのです。独裁国家は病気情報すら公表しないのかと世界的な批判を浴び、その後、胡錦涛国家主席が情報公開に踏み切りました。小生は当時、政治的でもないこんなことまでなんで隠すんだろうと不思議でなりませんでした。

 という前歴があるので、今回のケースも最初から世界は中国の情報を疑っていました。当初、死者がひとケタという報道でしたが、本当はもっと多いのではないと多くが指摘してました。当局が意図的に患者数、死者数を少なめにするという可能性があるほかに、中国は皆保険でなく、医療費が高いので貧困な患者は病院に行かず、死亡するケースもあると考えられます。となると、病院外で病死した人は当然、コロナウイルス肺炎死者数の中にカウントされないでしょうから。

 それはともかく、今回取られた都市封鎖というのは、思い切ったすごい措置だと思います。都市住民をその場に一定期間縛り付け、他地域に出ようとする人間は強制的に拘束することもありうるとのことで、ある意味人権を無視したおどろおどろしい手段です。日本では絶対に取れない措置でしょう。もし、経済活動が制約されたら、企業、ビジネスマンは多大な損害を被ります。法律的な根拠がなければ、当局はその損害賠償に応じなければなりませんし、第一、そんな措置を取れる法律的な根拠があるとは思えません。

 1月25日に旧正月春節)が始まります。この時期は中国人の家族が一堂に会することを期待し、帰郷の大規模な人口流動が起きる時です。が、今年は、武漢やその近郊に帰る人のみならず、全中国で動くのを止める傾向になり、交通の利用は激減するでしょう。経済的なロスは測り知れません。「何の因果か知らないが,なんで春節の時期に」と、帰郷を楽しみにしていた多くの中国人は新型肺炎の流行をさぞや恨めしく思ったに違いありません。

f:id:higurashi-takanori:20200124231342j:plain

f:id:higurashi-takanori:20200124231250j:plain

  上の写真は、台湾北部・金宝山にあるテレサ・テンの墓苑。前は太平洋、後ろは山と風水にかなった素晴らしいロケーションでした。