つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

大坂選手の人種差別反対マスクに違和感

 大坂なおみ選手が再度、全米オープンテニス選手権で優勝できて喜ばしい限りです。何だが、初戦から自信満々の様子で、ゲーム展開に隙がない。これは絶対に勝ち上がるな、恐らく決勝でまたセリ-ナ・ウイリアムズと再戦し、勝利を収めるのかと予想していました。決勝の相手は違いましたが、アザレンカという男優りのベラルーシ選手も素晴らしい。でも、大坂は最初に1-6でセットを落としながら、その後しり上がりに調子を上げ、挽回しています。彼女の実力が今向かうところ敵なしといった状態なのでしょう。今月末にグランドスラムで延期されていた全仏オープンもあるそうで、ぜひ頑張って欲しいです。

 それはともかく、彼女は今回、毎試合ごとに黒いマスクで会場入りしたのですが、そのマスクには、ジョージ・フロイドさんら白人警官に殺された黒人の名前が白抜きで書かれていました。選手権開始前に「私はアスリートである前に、黒人女性だ」と宣言した彼女はそのマスクを7枚用意し、決勝まで違う人の名を掲げるとしていました。であれば、7枚のマスクを掲示し切るとの思いが、今回彼女の力の源泉になったことは間違いないでしょう。

 彼女の行動にかなりの人が共感したことは確かだし、世界のマスメディアもその行動を称賛していました。小生自身の気持ちを言えば、黒人に対する米警官の扱いはひどいと思うので、その主張自体に100%異存はありません。特に、最も最近に起きたウィスコンシン州の事件の映像を見ると、警官が自動車に乗り込ませた黒人を背後から銃撃しています。ひどすぎる。小生も、白人から見れば、イエローという有色人種であり、差別の対象になり得る存在。ですから、他人事とは思えません。

 ですが、敢えて苦言を呈します。大であろうと小であろうと、スポーツの大会に政治的な主張を持ち込んでいいのかという点。単に名前入りのマスクがどうして政治的な主張なのかと言う人がいるかも知れませんが、小生はこれはやはり「人種差別反対」という政治的な主張だと思います。人種差別など良いわけないので、この主張はほぼ100%の人が同調するだろうとしても違和感があります。ついでに言えば、警官の殺害については異論もありましょう。現に米国内では警官が不起訴になっているケースが多く、警官への同情論がまったくないわけではない。

 どのメッセージも選手の恣意的判断に任されるとしたら、いずれおかしなことになりはしないか。「Ilove peace」「軍拡反対」「核兵器反対」と書かれたマスクであれば、同調する人がほとんどだから、了解されることになるのでしょう。では、「原子力発電反対」とか「中国の覇権主義反対」とか「英国のEU離脱反対」などと書かれたマスクが出たら、どうなのか。微妙です。もしもこれらも良いと言うのから、「We need war」とか「トランプは嫌いだ」とか「日本は慰安婦問題で謝れ」のマスクが登場したら、どう判断されるのでしょうか。

 オリンピック憲章では、競技の中で政治的宣伝はしてはならないとなっています。昔、陸上競技で1-3位を独占した黒人選手らが表彰台で黒い手袋をして、空に向かって突き上げるなどして一定の主張をしたことがありましたが、見ていて共感できる行動とは思えませんでした。テニスに限らず、ゴルフのグランドスラムでも何でも、やはり競技の場では政治的と思われる主張、行動は避けるべきです。

 大坂選手が人種差別を問題視し、その点を主張したいのなら、コートを離れた試合後の記者会見の場や、あるいは別の機会を設けて話すべきでしょう。彼女が別の場で主張しても十分説得力はあると思います。

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上の写真は、横浜「ベイクォーター」で見たチワワ。