つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

「栄冠は君に輝く」を第二国歌にしてはどうか

 現在進行中のNHKの朝ドラ「エール」は内人が見ているので、ついでに見てしまうことが多いのですが、なかなか面白い。戦前から戦後にかけて活躍した作曲家古関裕而とその妻金子をモデルにしたドラマで、彼が実際に作った曲が登場。事実かどうかは分かりませんが、作曲に至るまでの周辺情報が紹介されていて「なるほど」とうならせるものがあります。彼が戦前に作ったものは早稲田大学応援歌「紺碧の空」以外、つまり戦意高揚のために作られた軍歌には小生、興味がありません。ですが、戦後はなかなか良い曲を作っていたと思います。

 戦後編のドラマでは、長崎原爆で妻を失い、自らも被爆した永井隆博士の心情をサトウ・ハチローが作詞し、古関が作曲した「長崎の鐘」の裏話を取り上げていました。小生もカラオケでたまに歌いますが、この歌に親しみを感じるのは、実は小生、永井博士の子息と昔通信社で同僚だったからです。彼はベトナム特派員から帰ってきて社会部に在籍、その時にご一緒しました。両親同様敬虔なクリスチャンで、母校の上智大学近くの聖イグナチオ教会に通っていました。普段は紳士で言葉遣いも丁寧、とても優しい人なんですが、ひとたび酒を飲むと荒れるタイプだったことが強く印象に残っています。

 小生は古関の作曲で最高傑作は、甲子園高校野球の行進曲にもなっている「栄冠は君に輝く」だと思います。これも主人公と歌手(伊藤久男がモデル)との絡みがドラマで取り上げられていました。ドラマでは、戦前に軍歌を歌ってきた男が今さらスポーツ応援歌など歌えないとばかりに悩むところが出てきます。確かに、「栄冠は」はスポーツで戦ったあとにノーサイドになり、健闘をたたえ合う場にふさわしい、軍歌とはおよそかけ離れた曲調で、小生も大好きなメロディーです。

 昔、文部省の担当記者をしていた時に、記者クラブメンバーの一員として早稲田大学の幹部教授との飲み会に参加しました。その時の早大総長は法学部の西原春夫先生でしたが、何かの話のついでに国歌に言及することになり、彼はしみじみ「日本の国歌は暗いね。もっと明るい曲を第二国歌としたらいいと思うがね」と言うのです。そこで、小生が「では、どんな曲がふさわしいですか」と聞くと、「例えば、甲子園の行進曲なんかいいんじゃないか」と話していました。

 中国やフランスは国歌に行進曲を使っています。確かに、行進曲の方が何か人を鼓舞するところがあるようにも思えます。「君が代」はそれはそれで素晴らしい曲ですが、低音から入るところが高揚感を与えません。われわれが同胞意識を感じながら、声高に歌い上げるような曲ではない感じがします。ですから、儀式に使う正式の国歌とは別にもう一つ、われわれが仲間意識、同胞意識を感じながら歌える第二国歌があってもいいように思います。

 これも昔、南米ペルーの日本大使館が左翼ゲリラに襲撃され、大使館員らが長期にわたって監禁されたことがありました。その時に被監禁者が集まってどんな歌を歌ったかがのちに話題になりましたが、やはり「ふるさと」という曲だったそうです。「恋しや、ふるさと、懐かし父母、、」というあの童謡です。これも名曲ですが、疲れた、荒れた心情を吹き払って、気持ちを高ぶらせてくれる曲ではないような感じがします。その点、西原先生が言うように「栄冠は」がふさわしいのかなとも思います。

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 上の写真は、宮城県の旅行で見たコスモスと萩。