「祭り去り、やがて寂しき、自民かな」かも

　結果が出たので、一応自民党総裁選について触れておきます。正直言って面白くもおかしくもない、ドキドキ感がまったくない結果だと思います。岸田文雄という人、確かに人間的には素晴らしい人なんだと思います。ただ、巷間、「あの人いい人ね」と言われながらも、毒にも薬にもならない感じで、印象に残りにくい人がいますが、そういうタイプです。という意味では、自民党国会議員は、危機感が薄いのか、冒険心がないというのか、菅義偉さえいなくなればあとはだれでもいいと思ったのか、まったくの安全牌、無難な人を選びました。

　前々回のブログで、小生は初の女性総裁（首相）選出と予想しました。実を言うと、可能性はちょっと低いのかなと思っていましたが、希望的観測で高市を推しました。結果として、第一回投票の議員票で河野超えをし、110票以上獲ったのは立派です。小生は、女性首相の方が絶対インパクトがあり、世界的にも注目されるし、メディアもその後の高市の一挙手一投足を追っていくと思っていました。自民党にしても、1カ月半後に総選挙を控えるという状況の中で、自党に関心を集め続けるという視点からすると、大きなチャンスを失ったことになります。

　高市が選ばれなければ、河野太郎の方がまだ世間の注目度は高かったと思います。若いし、破天荒な人なので、何をするか分からない不気味さがあるからです。結局、安全牌の岸田さんが選ばれたため、世間の政局関心は途端に冷めてしまいました。その後に党や閣僚の主要人事が発表されると、さらに旧来の自民党に戻ったかといった感じで、一段とつまらなさが増していきました。相変わらずの論功行賞と血筋重視。これって根っからの自民党支持者もうんざりするのではないでしょうか。

　甘利明は、同じ麻生派の河野太郎を支持せず、いち早く岸田を支えたので、岸田が勝ったことから「幹事長」になるというのは予想通り。ただ、政治とカネの問題が気になります。遠藤利明も岸田陣営の選対本部長を務め、岸田勝利に貢献したので、自民党の「選対本部長」になるのもうなづける。ただ、総選挙が近づいてこのポストは一段と重要になりますが、彼の力で辣腕が振るえるのか、甚だ疑問。さらに訳が分からないのが、党の政策決定の最高議決機関の長である「総務会長」に当選3回の福田達夫を就けたことです。

　福田が今回、党風一新の会を率いて、若手議員を岸田になびかせた論功行賞の意味が大きかったのでしょう。そのほか、好意的に見れば、祖父、父親が首相経験者という政界サラブレッドだから早い時期から育てたい（と言っても53歳ですが…）、小泉進次郎と競わせたいという意図があったのかも知れません。が、それなら本来老練議員がやるべき総務会長でなく、官房副長官とか、場合によっては政策全般が分かる政調会長などのポストの方が彼の将来を考えた場合、良かったかと思います。

　高市をすでに経験済みの政調会長に再び起用したというのも面白味に欠けます。本来なら内閣に取り込み、外相とか防衛相、あるいは経産相に就けるべきだったでしょう。だが、重要ポストに就けると、高市への注目度が高くなるので、岸田は長期政権を目指す上で不都合だと考えたのかも知れません。今回、河野太郎を広報本部長に押し込めたことと併せて、総裁選コンペティターの扱いがひどすぎます。2人の人事が岸田本人の発想だとしたら、彼の肝っ玉が意外に小さいことを示してしまいました。

　閣僚人事でおかしいのは、麻生太郎財務相の後任に、麻生の嫁さんの実弟である鈴木俊一を起用したこと。これって完全に麻生の思惑に基づいた情実人事ではないか。麻生が岸田政権でも相変わらず財務省を牛耳ろうという意図がありありと感じられます。岸田は今回選挙で世話になったとはいえ、重要閣僚の人事でよくも唯々諾々と麻生に従ったものです。まあ、鈴木俊一も鈴木善幸元首相の子息。と見ると、彼といい、福田達夫といい、何だか血筋重視の人事としか思えてなりません。その意味では、小泉進次郎環境相の行く末が注目されます。

　どうやら、立憲民主党は共産党と政策協定を結んで、小選挙区での候補者一本化を図る様子です。自民党は菅義偉がいなくなったので大丈夫などと考えていると、揚げ足を取られます。総選挙まであと一カ月余、短いようでもあるが、それなりに長い。岸田政権が地味であればあるほど支持率は落ちていきます。「祭り去り、やがて寂しき、自民かな」などと言われないよう頑張って欲しいと思います。