つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

中国の言うスパイ容疑ってどういう内容なの

 昨年12月、中国上海で50歳台の日本人男性がスパイ容疑で逮捕され、まだ釈放されていないことがこのほど明るみに出ました。逮捕即公表されないことがまず驚きですが、中国当局が怖いのは、スパイ容疑と言っても具体的な容疑内容を明らかにしないことです。これでは、ほかの人が注意のしようがありませんし、場合によっては気に入らない人物を恣意的に拘束する可能性もあるのです。小生もかつて「こんなに脆い中国共産党](PHP新書)などの”反中本”を執筆しているので、反中国分子として拘束されかねない。今後、ちょっとかの国に行くのはためらわれます。

 中国でスパイ容疑で捕まった日本人は2015年以降、16人もいるそうです。で、容疑内容は一切明らかにされていません。何人かは釈放されているようですが、その後具体的に拘束された状況を話したり、取り調べの模様をつまびらかにした人はいません。これも異常。なぜそれほど怖がるのか。もし、小生だったら、ジャーナリストの端くれとして、取り調べの状況も含めて顛末を詳細に書いた本を出したいと思っています。

 常識的に考えて、我が国にはスパイ組織はありません。まあ、考えられるのは、公安調査庁や内閣調査室、あるいは警視庁公安部らそれらしい機関が中国から一時帰国した人に、事情を聴くといったことはあると思いますが、それは本来、スパイ活動ではない。スパイ活動というのは、かの国でその意思を持って能動的に情報収集活動を行うことです。あるいはマル秘の文書などを取りにいくことです。でも、中国では無理でしょう。公安の監視の目が縦横に張り巡らされているので。

 マスメディア関係者はいろいろ取材し、それなりの分析力も持っていますから、日本の諸機関も話を聞きたがります。かく言う小生も、駐在記者から帰国後、あるいは現地に取材に行った後、そうした機関で講演したこともあるし、情報提供をしたこともあります。ある意味、日本国民として当然のこと(法的義務はないが、、)だと思うのですが、それを中国側がスパイ呼ばわりするのなら、如何ともしがたい。中国側は、中国に来る日本人は日本国家への忠誠も止めろとでも言うのでしょうか。

 翻って日本にいる中国人は全員がスパイとは言いませんが、マスメディア関係者はほぼ中国の関係機関との関係を持っている人たちでしょう。外国にいる一般中国人についても当該国の然るべき情報を得たら、当局に通報する義務があり、これを怠ると罰則を課す法律があります。向こうは一般人さえ使って情報の集め放題、こちらがそういう行動を取ると、現地でパクられるという構図では割が合いません。およそ独裁体制の国相手では相互主義は成り立たないんですね。

 日本の民主党政権時代、伊藤忠商事元社長の民間人が駐中国大使を務めました。伊藤忠は中国でかなりのビジネスをし、商社としては儲け頭ですが、それでも中国の公安当局は容赦しない。確か、2,3年前に伊藤忠の現地社員をスパイ容疑で拘束しています。その時、小生は驚くと同時に、随分舐められたものだと感じました。これに対し、伊藤忠はビジネス優先なのか、件の元大使を含めて何の反発行動も起こしていません。商売第一、(儲けのための)友好第二。三、四、五はなく、政治、国家としての矜持というカテゴリーはずっと後の順位なのかも知れません。だとしたら、悲しいです。

 上の写真は、横浜伊勢佐木町モールにある有隣堂本店での文庫本コーナー。小生の書いた時代小説も平積みされているのですが、平積みは高さで売れ行きが分かるので辛い。もっと営業活動しないと。