つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

レアアース、半導体…経済安全保障体制は必要だ

 昨日、千葉に住む小中学校の友人宅で宴会があるので、朝出かけようとしたら携帯電話が可動しない。うんともスンとも言わない。で、駅前のドコモショップに行けば直ると、気楽に持ちこんだら、「壊れています」とのご託宣。新しいのを買うのを覚悟しつつ、携帯のないまま電車を乗り継いで千葉の友人宅方向に向かいました。で、しみじみ感じたことは、携帯を持たないとなんと不便なことか。電車の中で読む本や雑誌を持たない場合、小生も他の乗客と同様に携帯のニュースを見たり、動画を見たりで時間をつぶしますが、今回はそれができない。

 目的地の駅に着いても、どこで待ったらいいのか。他の人と連絡が取れず、かといって携帯がないので、訪問先の友人宅との連絡もつかない。相手の住所、電話番号も知らないし、付近に公衆電話もない。しかも連絡すべき電話番号などの情報はすべて携帯の中にある。仕方なく一人で駅の改札口で待っていたが、だれも来ない。まさか改札口が2つあって間違った場所で待っているのかな、そうこう考えていると、まさに絶海の孤島にいる遭難者のような感じでした。無携帯電話状態というのは、実に孤独感を催すことか。

 駅員に聞くと、改札口は一つでした。そこで改札口でひらすら待っていたら、しばらくして同じく宴会参加の友人たちが来たのでほっとしました。彼らは携帯を持ち、訪問先の電話番号を知っているので、連絡が付きますから。これはまさしく孤島にいる遭難者が付近走行中の船を見つけ、救助されたという印象。われわれは普段、携帯を持っているのが当たり前なので、なんとなく場所も確認しないまま、目的地付近に来ます。分からなければ電話すればいいやという感じでいい加減に出かけますが、これは飛んでもないことだと分かりました。他人と連絡がつかない、地図も見られない。今の時代、携帯がないと、何にもできないのです。

 それはともかく、今朝の日経新聞朝刊に「欧米がレアアースを自前生産。中国依存から舵を切る」というニュースが出ていました。鄧小平はかつて「中東には石油、わが国にはレアアースあり」と言って戦略物資化する姿勢を見せていました。実際、日中関係が悪化した折、日本は中国からレアアースの輸出を差し止められています。今、米中関係は悪化しているし、将来台湾侵攻などが起きたら、中国は再び今のロシアの天然ガス同様に欧米、日本向けレアアース提供を差し止めるかも知れません。

 それで欧米はスウェーデンで鉱床を見つけ、将来的にはそこに依存する態勢を取る構えとか。賢明な選択かと思います。今回のウクライナ戦争を見て分かるように、侵略を是とする独裁国と重要物資でサプライ関係を持つといかに苦労させられることか。ロシアは天然ガスの安定供給をちらつかせて西側諸国の分断を図ってきています。悲しいことに西側先進国でそれに乗る国も出てきています。そういう分断を避けるためにも、本来重要物資、戦略物資は信頼できる国々との関係で賄うべきです。

 対中国関係で思い出すのは、半導体のこと。米国は最近、ハイレベルの半導体を中国に移転させないよう日本、オランダ、台湾に申し出てきました。中国にハイレベルの武器を造らせないためです。中国が台湾侵攻をちらつかせている以上、日本も米側の申し出に乗るのはやむを得ない対応かと思います。実際、ロシアはすでに西側の半導体を入手できないため、事実上ハイレベルの戦車、航空機は造れません。ウクライナという独立国に一方的に侵略した国が最終的に勝利などできないよう相応の措置を講じるのは当然のことかと思います。

 そこでつらつら考えてしまうのは、ウクライナ戦争が終結した後、欧州は対ロシア関係でどう出るかという点。ロシアは信用できないので、天然ガス依存を将来的にも止め、ロシア以外の国への依存を図るべきだと言う人もいるし、やはり安い製品であるし、サプライ関係を復活させるべきだという人もいます。本来、世界中が平和であるなら、国々が分業体制を取ってサプライ関係を持つことは必要だと思います。でも、これはノー天気な楽観主義平和論かも。我利を通すために戦略物資を使って他国へ圧力をかける国があるのですから、やはり無条件のサプライ関係は危ういし、考え直すべきかと思います。

 中国のレアアース禁輸の時もそうでしたが、今回のロシアの天然ガス輸出制限を見て改めて戦略物資の重要性が分かりました。悲しいことですが、中国、ロシアがそのことを教えてくれました。食糧、エネルギーはもとより、戦略物資についても他国に頼らなくてもいいように経済安全保障体制をしっかり考えておくべきなんですね。

 上の写真は、昨年夏、京都の嵐山・渡月橋をバックに撮ってもらった一枚。京都は時代小説に使える現場の宝庫です。