つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

”精巧”な構図に驚くばかりの今回の強盗集団

 マニラにいる人間から指示を受けて日本の若者が強盗を働いたという一連の事件を見ると、「こんなことって、本当にあるのか」と改めて驚いてしまいます。というのは、指示を受けて末端で犯罪を実行する若者は、ネット上の「闇バイト」というサイトに誘導されて登録します。まず、「バイト」という表現はイージーで、若者が入りやすい。そこで若者は「これをやると50万―100万円になる」という高額な”報酬”に惹かれる。そして操り人形のように指示に従って、実際に強盗事件を起こしたりします。信じられないけど、本当にそういう構図なんですね。

 確かに、日ごろから仲の良い、多少ワルの若者数人が相談して、金持ちそうな家があるから強盗に入ろうかと企てるだろうか。答えはノーでしょう。自分たちだけでワルの計画を立て、実行するというのは相当勇気が要る。仲が良ければ、なおさら互いに牽制し、最後は「止めとこう」となるでしょう。でも、一定のプロセスを経て集められた互いに知らない者同士の集団がなんとなく上から指示されると、他人の家に押し入り、「殴れ」と言えばその通りに実行できるんですね。不思議と言えば不思議、恐ろしいと言えば恐ろしいです。

 つまり、今回の一連の強盗は、計画者がいて、指示役がいて、実行犯がいてと分業化されていることが大きい。犯罪を最初から最後まで行うより、犯罪が分業化されると、その”作業”の一つひとつの犯意については希薄になる。そのため、犯罪者は全部をやるより参画しやすくなると思われます。下の奴は「上に身元を明らかにしてしまったので、指示を断るわけにはいかなかった。報復される恐れもあるので」と言えるし、上にいる奴は「俺は指示しただけだ。実際にやる奴が悪いんだろう」と言える。ある意味、責任のなすり合いができる構図です。ですから、非常に高等に組み立てられた犯罪と言えましょう。

 それにしても驚かされるのは、マニラには、罪を犯したいかがわしい人間ばかりを収容するところが人通りの多い街中にあり、その中にいる人間は金さえあれば、シャバと同じようにかなり自由な生活ができるという点。今回の指示役「ルフィ」と言われる4人はその収容所にいて、PC、携帯を使って日本の若者を操っていたというのですから、驚くばかり。フィリピン当局の犯罪者に対する取り扱いのいい加減さもさることながら、収容所にいて自由が利かない人間の指図なのに、遠い日本でその通り動く奴がいるというのも正直よく分からない。 

 小生のような下衆のかんぐりで言えば、日本での犯罪実行者は、奪った金品をマニラに上納せず、なぜそのままとんずらしてしまわなかったのか。指示役がマニラ、しかも収容所にいるのを知っているなら、とんずらしても追われることもないと考えなかったか。ただ、この犯罪実行者たちは日ごろの仲間でなく、それぞれネットで別個にリクルートされた人たちだから、そういったさらなる”悪だくみ”まで相談できなかったのかも知れません。その意味では、ネットで初見の者たちを集め、犯罪集団を構築するというのは実にうまい方法であると思います。

 問題はマニラの指示役の上に「元締め」みたいな奴がいるのかどうかという点。末端実行者に金品ともども逃亡させない、そういう奴は懲らしめるというシステムがあるとすれば、マニラの指示役の上に相応の元締めがいるはずです。それも日本で広範に組織を持っている犯罪集団が考えられます。確かに、そういう組織がいたならば、実行犯の末端のガキどもは報復が怖くて逃げられないでしょう。日本の警察もマニラの指示役の逮捕で終わらず、その元締めまで追及してほしいと思います。そうでないと、われわれ老人は、夜間の強盗が怖くて枕を高くして寝られません。

 上の写真は、三軒茶屋の茶沢通りにあるビルの上のゴリラ。昨日、友人宅に行く途中で久しぶりに見上げてしまいました。