つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

観光地の従業員にはいろいろな人がいる

 先週はツアーに加わって北海道最北端の稚内、利尻、礼文島を訪れ、今週末は香港時代の山仲間と一緒に福島県吾妻山系の一切経山に登り、温泉を楽しんできました。野生の花好きの小生としては利尻、礼文の低地にも咲く高山植物、それから吾妻山系では竜胆、キリン草の咲き乱れに遭遇してハッピーでした。いつも、旅でそれ以上に楽しみなのが人との遭遇。どんな観光客が来てて、ホテルや食堂にどんな従業員がいるのかには興味津々なので、思わず見ず知らずの人に声を掛けてしまいます。これも好奇心旺盛な記者の悲しい習性か。

 で、礼文島のホテルでも身近に接する従業員にはかならず「どこの出身?」と質問しました。そこで面白かったのは地元(島)出身の人は一人もいなかったこと。ある人は「大阪から来た」と答え、ある人は「岐阜から来た」と答える。中には「札幌」と道内出身者もいましたが、ほとんどよそ者で、特に驚いたのは、沖縄から来た人がいたこと。よく聞けば沖縄南部の糸満市の出身者とのこと。糸満には小生も今年3月に訪問しているので、思わず話が弾んでしまいました。

 日本の最南端から最北端に来るとは確かに驚きですが、以前にも同様の経験をしています。というのは、5、6年前に先島諸島西表島に行った際、観光ガイドに出身地を聞いたところ、「北海道」と答えた人がいたので、びっくりしました。他にも結構道人が働きに来ているそうです。それで、「なぜ、道人が南国へ」と質問したところ、「北海道は寒いから嫌だ」との答え。道人にも寒がりはいるんですね。でも「ここでの台風の風の強いことに驚いた。東京にも住んだことがあるが、東京で感じる台風の風なんて大したことない」とも話していました。

 礼文島の沖縄人は純粋に季節労働者として来ています。まあ、一度観光で来て魅せられ、それで毎年同地の観光シーズン(5月くらいから10月まで)に来て働いているようです。見たところ、それほど若くない、恐らく30代後半の女性。で、観光シーズン以外の季節はどうしているかが疑問ですが、どうやら沖縄に帰ってスキューバダイビングのインストラクターなど観光関係の仕事をしているそうな。世の中にはフーテンの寅さんのように、日本列島の隅々まで股にかけて働いている人がいるんですね。

 礼文島の食堂の給仕に若い中国人女性がいるのにも驚きました。中国中部江西省出身とのこと。そこで、「この島に中国人観光客は来るの?」と中国語で聞いたところ、「今はほとんど見ない。私は最近こちらに来たばかりで分からないのですが、以前は来ていたようです」との答えでした。周りを見回しても、中国人のインバウンドはまだ戻っていない様子。という意味では、中国語使いはまだ宝の持ち腐れの感があります。

 今週行った吾妻山中温泉ホテルのカフェーラウンジにもパキスタン人がいました。このパキスタン人はそれなりに上手な英語を話していましたが、イスラム教徒ですから、「サラマレーコン。アッラーフ・アクバル」と言ったら、喜んでいました。こうした外国人まで雇っているのは恐らくインバウンドの外国人向けでしょう。コロナ禍が終わり、さあこれから外国人が大勢来ると分かったので、ホテル側もしっかり言葉の分かる人材を用意しているんですね。

 吾妻山中の温泉ホテルには、若い男女が食事の給仕をしていました。女性に話を聞くと、本人は大阪市の出身で、婚約中のご亭主と一緒に修業のために働きに来ているとのこと。そのご亭主となる人は山形の蔵王温泉にある大きな老舗の温泉宿の御曹司であり、将来その旅館を引き継ぐとのこと。つまり、女性は将来”若女将””になる人なんですね。「僕も山形に縁があり、蔵王の湯は好きだ。いずれ蔵王のあなた方の宿にも行こうと思う。顔を知っておきたいから、マスクを取って顔を見せてくれ」と言ったら、素直にマスクを取ってくれました。それなりに美形でした。

 小生は20歳代のころ、仕事で山形市にいた経験があり、蔵王温泉にはスキーでよく通っていました。それで話も弾みました。親しくなったつれづれに、「僕は福島と山形県境の峠を背景にした時代小説を書いているので、ぜひ読んでくれ。アマゾンでも売っている」と言って名刺を渡しておきました。その女性は「私も小説が好きなんで」と言っていましたが、今時の若者、どれほど時代小説に興味があるかどうか。でも、大阪人が結婚して何も知らない山形で暮らすなら、地元の基礎知識を知る意味でも、小生の小説をぜひ読んで欲しいと思います。

 上の写真は、一切経山で咲き乱れる竜胆。上と真ん中で開花状態が違うのは山の上下の差でしょうか。一番下の写真は一切経山頂上での小生。