つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

サウジは「お前もワルじゃのう」の越後屋か

 今、ガソリンの値段がこれでもかという感じで上がっています。というのは、原油価格が一バレル100ドルに迫っているからです。かつては50ドル以下の時もありましたし、まあ常識的には60ドル前後が相場だと思いますが、現在はご承知のように産油国の一つロシアが戦争していますし、その少産状況に拍車をかけるように、最大の産油国サウジアラビアが高価格を維持しようとして減産態勢に入っています。実にアコギ、理不尽な振る舞いで、サウジは「お前もワルじゃのう」の越後屋かと言いたくなります。

 実はこれまで、OPEC原油の高値維持のため協調減産しようとする時にいつも水をかけていたのはロシアでした。ロシアはOPEC非加盟ですから、自由に生産調整できます。この国は軍事大国ですが製造大国でないので、第2次産業の産品は輸出できない。安定的に外貨を獲得するための手段として農産品のほか、原油天然ガスの輸出が欠かせません。したがって、ロシアのお陰で原油の値段は比較的に低価格で推移し、われわれ輸入国は助かってきました。

 ところが、ウクライナ戦争のために、西側はロシアに対し制裁を課し、表面的には原油輸入禁止の措置を取りました。ロシアはそれで報復減産に入りました。実は、それでもロシアは中国やインドに原油を輸出、そのうちインドに入った分は現地で精製され、西側特に西欧に再輸出されています。が、それは直接輸入より高値であることは否めません。いずれにせよ、戦争の影響でロシア原油は減産。本来、その減少分をサウジなど中東産油国が補填して欲しいのですが、サウジはロシアの減産をこれ幸いとばかりに、自分たちも減産に入ったのです。

 日経新聞によれば、サウジは今年7月から世界の需要の1%に当たる日量100万バレルの減産を始めたようです。OPEC諸国もそれに追随しています。実に自分勝手なやり方で、江戸時代、米の不作が予想されると買占めに走って、あとで高値で売ろうとする悪徳商人と同じやり口です。ロシアの無謀な戦争、米中の経済対立もあって、今、世界のサプライ態勢はずたずたになっています。サプライチェーンというのは合理化の産物であり、これが切断されれば非効率化し、すべてがコスト高となります。

 加えて忘れてはならないのが、米民主党政権が環境悪化につながるとしてシェールガスの生産を止めてしまい、石油を一部中東に頼る態勢に戻してしまったことです。シェールガス生産はバレル60ドル前後で採算が取れると言われているのですが、止めてしまったため、中東の石油を買わざるを得ない。つまり、西側諸国の原油を求める先がサウジ、中東諸国に集中する。であれば、原油減産があれば世界平均価格が上がるのは必然です。北海ブレンド原油は90ドルを突破し、バレル100ドルに近づいているようです。

 唯一の救いは、中国がロシア支援のためにこの国からの原油輸入を増やしていること。その分、サウジなどの中東諸国から購入する量が減っており、今、ロシアからの輸入量がサウジからの輸入量を超えているとか。中国はロシアから”友好価格”として割安で輸入しており、サウジの原油高値の影響を受けないようにしています。こういう国があると、制裁がなんだ、我が国もロシアから買おうという国が次々に出てきそうです。

 欧州でもハンガリーがその国であり、スロバキアも親ロシア派政党が伸してきてNATOの結束を乱そうとしているそうな。米国でも野党共和党の保守派が「ウクライナ支援を抑制すべきだ」と訴えているとか。戦争も1年半がたって欧米にも支援疲れが出てきているのは確か。でも、ウクライナが有利な戦況にあり、今こそ支援が必要であると思うのです。それなのに、支援を抑える動きが出ることはとても残念です。

 上の写真は、横浜駅前にあるスカイビル29階のレストランから撮った夕焼けの風景。下は野毛山公園ランタナ