つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

海洋を奪われ中国軍の臨検を受けてもいいのか

 中国は世界一流の覇権国になりたいようで、取りあえず太平洋への進出を図っています。米国の有名な国際政治学の泰斗で将軍でもあるアルフレッド・セイヤー・マハンは海洋を支配する国家が世界覇権を握ると言っています。米国の軍人ならだれでも知っている名前ですが、中国の軍人の中にも彼の信奉者が多いのです。それで東シナ海南シナ海の支配はもちろんのこと、太平洋も支配したい様子。で、習近平は米軍ハワイ司令部の高級軍人に対し、「太平洋は米国が東側、中国が西側と分割管理しよう」などと持ち掛けたとか。

 海洋の支配権とは、やくざ屋さんで言えば「シマ」と一緒で、海底、海上の海洋権益を確保し、いったん事が起きたら船舶の臨検もできるし、通航の妨害もできる権限を持つということ。したがって、他国は経済活動の上からも軽視してはならないことなんですが、いわゆる「平和主義者」の多い日本では一般的にこの辺が理解できていないようです。中国が南シナ海サンゴ礁を埋め立て、軍事基地を造っても日本と直接関係ないのだから目くじらを立てる必要ないんじゃないのという人、意見が多い。飛んでもない認識です。

 日本は石油を中東方面に頼っており、南、東シナ海を通って運んでくる。ですから、これらの海域が中国に抑えられたら、死活的な問題となります。さらにインド洋。今、中国は海洋調査船をインド洋に送って海洋調査を進めています。周辺海域、太平洋だけでなく、インド洋にも進出、支配しようと狙っており、インドが警戒感を強めているんです。インド洋上の観光島嶼国として有名なモルディブでは、2年ほど前の大統領選挙で中国寄りの人が当選、インドから中国になびくようになりました。

 モルディブが、インド洋を調査するための中国船舶(恐らく軍用船)の基地として港を使わせていることが最近発覚、インドが不快感を露わにしました。すると、当のモルディブからでなく、中国軍部が「インド洋というのはインドが支配する海洋という意味ではないだろう」と反論してきました。中国軍はもともとミャンマーのチャウピュー、スリランカのハンバントタ、パキスタンのグゥアダルなどの港に専用基地を持ち、「インド洋の真珠の首飾り戦略」とか言って、この海洋の進出にも熱心なんです。

 日本に近い南太平洋の島嶼国にも中国はモーションをかけています。太平洋支配に向けたイニシアチブでしょう。これら島嶼国はもともと米国、オーストラリアの”シマ”だったのですが、中国が経済支援や治安対策支援などを言い出して自国の方になびくように誘っています。それで、あの有名なガダルカナル島も含む島嶼国である「ソロモン諸島」はすっかり中国寄りになってしまいました。

 中国は世界的に広域経済圏構想「一帯一路」とかいう外国篭絡作戦を展開、諸外国にインフラ建設を進めるという名目で金をばらまいてきました。モルディブソロモン諸島も恐らくこの金に目がくらんだのです。あたかも尾崎紅葉著「金色夜叉」で、貫一に叱責されたお宮のように。ソロモン諸島の首都ホニアラがあるガダルカナル島は、ソガバレ首相が中国の賄賂攻勢を受けたせいか、中国贔屓なのですが、別の島では長年の台湾支援に恩義を感じて親台湾、反中国。そこで島民の間で対立を生じているようです。

 南太平洋島嶼国への影響力をめぐって西側諸国と中国の対立が続いているので、日本も西側の立場でこの綱引きに参加し、最近でも上川陽子外相がこれら島嶼国を歴訪しています。素晴らしい行動です。日本にとっても西太平洋全体の支配権を中国に奪われたら、中国の了解なしには生きられない状態になります。その結果、日本は、民主的な選挙はなく、習という独裁者が壟断する国の属国になり、言うことを聞かざるを得なくなるのですから、これまた死活的な問題でしょう。

 日本の愚かな人たち、特に左翼系と言われる人たちはこの安全保障論が分からない。日本国土が侵されない限り、侵略を受けたことにならないと考えているようです。われわれの生活が貿易、海外との交流で成り立っているという視点で見ると、単に日本の領土、領海に目を向けているだけでは駄目。世界を俯瞰し、自由、民主主義、人権が保障される安全な国際社会をどう構築していくかというレベルで発想し、そういう国家同士で協調していく、場合によっては同盟関係を結ぶといった選択が必要です。世界にはいまだに、独立国を蹂躙しても平気なロシアのような国があるんですから。

 上の写真は、年明け後の池袋駅西口「東京芸術劇場」界隈。池袋は今でも中国人が多い、中国の”シマ”になるのか。下の方は、横浜・伊勢佐木町モールの春節の飾り。