つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

異次元の少子化対策は人口の地方分散化から

 厚生労働省が発表した2023年の人口動態統計で、一人の女性が生涯に産む子供の数(いわゆる出生率)が1・2人と過去最低になったとか。子供を育てるためには教育費が必要だし、夫婦二人でいるより多くの費用が必要です。小生は子供がいないので、その分の負担がなかったのですが、でも老後になり、友人たちがやれ子供がどうした、孫がどうなったなどという話をすると、やはり子供や孫がいた方が楽しみがいっぱいあっていいだろうなとしみじみ思うこともあります。

 でも一方で、子持ちの人からは「育児は大変」「いない方がいいかも」との感想も聞かれます。確かに、子育てには膨大な費用がかかるし、恐らく夫婦は自由な時間が持てないのではないかと推察できます。小生、別段、子供を拒否したわけでなく、自然に任せてできなかっただけですが、子育てが楽しめなかった分、結構海外旅行をしたし、うまいものを食べたり、自由に自分たちだけの時間を謳歌したようにも思います。最終的にこの損得勘定はどうなのか。将棋風に言えば、「子供のいない人生もまた(別の)一局」ということなのかも知れませんが…。

 人口動態の話に戻ります。子供がいない、作らないという風潮は別段日本だけでなく先進国での一般的現象なんですね。昔は子だくさんで有名だった中国ですら、先進国に近づいたせいか、最近子供には教育費がかかりすぎるということで結婚しても子供を作らない夫婦が増えています。いや、それどころか「躺平(寝そべり)族」とか言って結婚すら望まない若者も出ている始末です。それで14億人超の中国も、一昨年辺りから人口減少状態にありますが、中国で少子化対策という声はあまり聞かれません。

 日本では、岸田首相が「異次元の少子化対策」を言っています。その割には出された少子化対策はとても異次元には見えません。むしろ小池都知事が展開する子育て対策の方が先を行っているように見受けられます。それでも東京都の出生率は今回の調査で「1」にも達していないのです。東京はもともと働き、遊ぶところという認識で、生活する、子育てするという場所には見られないのかも知れません。

 今、概して地方自治体の方が政府より子育て施策が進んでいるように見受けられます。地方は居住者がいなくなって限界集落(都市)化、そして自治体が消滅してしまうことを極端に恐れているようで、独自に努力しています。小生はかねがね東京の一極集中は大問題、なんとかならないかと思っていました。横浜からたまに渋谷や新宿、池袋などの街に出ると、人が多くてうんざりします。極端な話、東京集中を減らすため、居住者からがもっと住民税を高く取ったり、遊びや旅行で来る人から”入境税”を取ったりしても構わない、その分を地方に分けたらいいとさえ思っています。

 地方に働く場ができ、充実した子育ての場ができるのは大賛成。住民の分散化は日本全体の均衡発展のためには良いことです。今、総務省の施策として、都市住民を一時的に地方、それも山村や離島などに住ませてその地区を活性化させようとする「地域おこし協力隊」なる制度があります。地方移住した人を公務員として雇用し、最長3年の給与を保障するという中身で、2023年には、1164カ所の自治体がこの「特別公務員」を実施したところ、7200人が応募、参加したとか。

 そして3年過ぎた後、移住者たちは7割前後のオーダーでその移住地に定住するというのです。定住率が高い都道府県(東京以外)としては、一位が山口で、2位以下は静岡、石川、北海道、栃木、広島、熊本、大分、青森の順。小生の感覚で言えば、気候温暖で住みやすい瀬戸内海に面した山口、広島、大分は分かります。静岡は温暖で関東にも関西にも近い地の利があり、昔から関東人が老後に住みたいあこがれの地。熊本は今、台湾の半導体企業TSMCなどが工場進出し活況化しているので、これらも理解可能です。

 小生は寒いのが大嫌いなので、個人的には北海道や青森を移住地に選ばないと思いますが、中には寒さに強く、八甲田山の山並みや北海道の大自然にあこがれる人もいるでしょう。栃木県は47都道府県の中で一番魅力度が低い県と言われていますが、それなりに定住化に向けた施策を展開していると思われます。いずれにしても、TSMCの熊本、ラピダスができる北海道など地方に先端産業がもっともっと進出、発展して若者の移住が進んで欲しいと思います。

 上の写真は、野毛山公園の紫陽花。今年もこの花の季節になりました。