つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

再度言う、消費税反対の愚かさ

 前回の「日暮日記」に、官僚の天下りに寛容な話を書いたところ、「ほ」さんから批判が出ました。「民の天下りは彼ら自らの採算の範囲内でやっているのに対し、官は税金、国公債など民への負担、自らに都合の良い法制によりやっている点が大きく異なる」というご指摘です。官と民の在り方の違いは基本的にはその通りであり、反論はできません。ですから、こういうシステムの論理で言うと、官の自由勝手は許されないでしょうね。
 しかし、官はそれなりに優秀な人材を確保しなければならないという観点に立つと、やはりそこに働く人の労働条件は大きな意味があり、優秀な人材を引き付けるだけの制度でなくてはならないと思うのです。厳しい言い方をすれば、民間企業は最悪つぶれてもいいのかも知れませんが、国にしろ地方にしろ政府、自治体はつぶすわけにはいかないのですから、彼らの生涯労働条件をそれなりに考えてあげなければならないでしょう。小生は、溜飲を下げるような、世間的に受けがいい「官僚、役人悪玉論」は賛成しません。もちろん我田引水するような役所のシステムには目を光らせなければなりませんが、、。
 また、ちょっと的外れの反論ですが、民間では結構、下請けに大企業の退職者を押し付けているケースがあります。その場合、連結決算しているような子会社はともかく、下で競わせているような中小零細企業は大企業の採算の範囲内ではありません。そうであれば、中には下請け側で倒産するところが出るかも知れませんが、大企業側はそれには関知しないでしょう。言いたいのは、倒産はあくまで下請けの方で、大企業が倒産するわけではないということです。
 それはさておき、総選挙に向けて各党の政策が徐々に明らかになってきました。いまだに消費税に反対と言っている政党もありますが、正直これにはあきれます。目の前しか見えない庶民に迎合する悪しきポピュリズムです。何度も書いているように、今夏、小沢の反乱で、消費税が廃案になりそうになったとき、マーケットではジャンクボンド化を懸念して日本の国債長期金利が上昇しました。これは、日本の財政制度への不信感の表れであり、もう税の増収を計らなければ、日本国は持たないということを示しているのです。
 消費税反対の政党がよくいうセリフに「こんな不景気の時に増税してどうするのか」ですが、「じゃー日本はいつになったら増税できる機会が訪れるのか、その前に国家財政が破たんしてギリシャの二の前になるぞ」と言いたくなります。左翼政党は相変わらず「大企業、大富豪から税金を取ればいい」と紋切型の主張をしています。これも一見分かりやすいのですが、よく考えるとしょせん浅知恵であることに変わりありません。日本が大企業や富豪に過酷な税を課すなら、彼らはなにも日本に固執しないのです。欧米などでもすでに見られますが、企業も富豪もさっさとタックスヘーブンの国に逃げてしまいます。
 小生も以前香港に駐在していた時に、日本の金持ちが大勢香港に来て生活しているのを目撃しました。香港もシンガポール法人税所得税が16−20%程度と低いですから、こちらの方がはるかに暮らしやすいのです。今はグローバリゼイションの世の中、企業も人も流動性を持っていますし、金持ちはとくに海外に出ることへの抵抗がないのです。特定な人を狙い撃ちにする税制であれば、その人たちは愛着ある母国であっても、さっさとおさらばしてしまうでしょう。
 その点、だれからも税金が取れる消費税は、先進国の欧州各国がこの税制にこだわり、すでに20数%の税率を課していることからも見ても、もっとも合理的な税システムであることが分かると思います。企業も人も、税も、日本一国の国内だけで動いているわけではないのです。選挙民は、もっと世界全体をながめるマクロ的、俯瞰的な視点で判断したいものです。
 下の写真は、中国江西省ム源県の繁華街で見た新婚夫婦。中国では、結婚式の礼装をしカメラマンを引き連れて街中を動き、風景がきれいなところで記念写真を撮る風習があります。これは、自分たちの記念アルバムを作るためというより、晴れやかな衣装を周りの人に見せ、祝福されたいという意味があるのだと思います。