つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

徴兵制度は民主主義の産物、「悪」ではない

 実に余計な心配なのかも知れないのですが、大相撲の十両力士にウクライナ出身の「獅司」という関取がいます。彼は1997年1月16日生まれだから、今年27歳。祖国では立派な徴兵年齢です。ウクライナでは今、戦争のまっ最中であるので、若者は海外にいようと祖国に戻り、戦場に赴くものと考えますが、獅司にはその義務がないのでしょうか。それとも海外にいる者は徴兵対象にならないのでしょうか。

 ウクライナに比べて韓国はシビアです。適齢期に海外にいようと、どんな地位にいようと、どれだけ稼いでいようと国籍を持つ限り国民の義務を全うすることが優先されます。近ごろ話題になったのはBTSという世界的に著名な音楽グループメンバーで、今、全員が徴兵されて1年半の兵役に就いているとのこと。芸能界にいて世界的に有名であり、それなりの外貨を稼ぎ、国家に貢献しているのだから、特別扱いがあってもいいのかなとも思いますが、韓国ではそれが許されない。若者は坊主頭になって粛々と営舎に向かいます。

 その昔、サバティカルリーブの教員の代行として、1年間だけ早稲田大学で中国語の授業を持ったことがあります。その授業の中で鮮烈に記憶に残っているのは、クリスマスを直前に控えていた時期なので、学生に「クリスマスはどう過ごすの」と聞いたのですが、ある女性から意外な返事を受けたこと。多くは「友人と一緒に騒ぐ」「家族とケーキを食べる」などの当たり前の返事でしたが、女性の中からは大胆に「彼氏と朝まで過ごします」という反応もありました。

 ある女性がそう答えたので、悪乗りしてついでにその隣の女子学生にも「君も彼氏と一緒に過ごすの?」と流れで聞いてしまったのです。すると、彼女は「私は、女友だちと一緒」との返事。さらに余計なことでしたが、「君くらいチャーミングであれば、彼氏くらいいるだろう」と聞くと、「います」。「では、なぜ彼氏と一緒じゃないの」と追い打ちをかけると、「彼氏はいます。でも、一緒に過ごせないんです」。「なぜ?」って聞くと、「彼は今徴兵されているんです」との答えでした。

 日本の若者の現実からして、まったく予想できなかった答えなので、びっくりしました。恐らく彼氏は韓国人で、兵役中なんだろうと思い、「そうか、それは大変だなー。彼氏に頑張れよと伝えてくれ」と言うのが精いっぱいでした。多くの国では徴兵制があり、一定期間の兵役が義務付けられており、当たり前のように男女が会いたくても会えない時期があります。小生も含めて甘ちゃんの日本人は、そんなことは思いも及ばない。中には、国民の義務をほとんど考慮せず、「若者に対しなんてひどいことを」といぶかる人もいるんですね。

 実は、徴兵制というのは民主主義の産物なんです。フランス革命以降に始まったと言われています。それ以前は専制君主が一定の暴力装置確保のために”戦い好き”な男どもを傭兵として囲っていたのです。それに比べて、われわれが愛すべき国家、同胞、この誇るべき政治制度を守るために国民が等しくその義務を負おうというのが徴兵制であり、気高い制度なのです。それなのに、お馬鹿さんの一部の勢力は「徴兵は悪」論を展開しています。そんなことでいいのか。

 小生はこのブログで再三、「日本は、武装は要らない」「平和を望む者が武器を持っていいのか」と主張する人をとんでもない連中だと非難し、軽蔑してきました。こういう連中は、武力で他国に圧力を掛けてくる中国やロシアの回し者で、独裁者のしもべ、独裁国家の属国になっても良いと考える国賊者だとさえ思っています。武力がなければ国は守れません。一定の兵力がなければ、武力は成り立ちません。一定の兵力確保のために国民が等しく貢献するシステムが徴兵制です。ということをわれわれは今一度認識しなければなりません。

 ちなみに、獅司は、今ロシア占領下にあるザボリージャ州メリトポリ出身です。ロシアはウクライナで占領している地域住民からも徴兵しているとのことですから、もし獅司に徴兵に応じる意思があるとしたら、占領者のロシア側に付くのか、それとももともとの祖国であるウクライナ側になるのか。大いに気になるところです。

 上の写真は野毛山公園のさつき、つつじ。