つれづれなるままに-日暮日記

現世の森羅万象を心に映りゆくままに書きつくる。

止められない、佐伯泰英の時代小説

よくよく考えてみると、今日は小生の誕生日でした。自分自身が年齢を忘れようとしているので、具体的な数字は言いたくないのですが、それなりの年齢になりました。昔は誕生日などは自分と家族、関係者しか知らなかったものですが、最近は、フェイスブックでの祝賀催促があったり、大型販売店のポイントカード、航空会社のマイルカードなどで誕生日を記入する欄があったりで、広く知られるようになりました。
そこで、誕生日近くなると結構いろいろなところから、割引や優遇の情報がメールで舞い込んできます。金のない我々庶民からすれば、たいへん結構なことかも知れませんが、一方で、なんだか無理やり誕生日を認識させられているようでもあり、うっとうしい感じもします。
それはさておき、佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙」シリーズの続編である「空也十番勝負青春篇」の5冊目「異郷のぞみし」を昨夜ベッドで読了しました。居眠り磐音は51巻、プラスその解説本3冊もすべて読みましたが、長い間読んでいると、磐音を取り巻く人間関係、人となり、さらには江戸の下町に親しみが沸いて、彼ら、彼女らはどうなるのだろうという家族愛的な関心が高まります。長編シリーズというのはそういう近親感があるので、いったん読み出すと、ピーナッツやホップコーンのように止められなくなるんですね。
空也十番勝負」は磐音シリーズの続編です。空也というのは磐音と最愛の妻おこんさんの間の嫡男で、父親の教えを受けた凄腕の剣士。今、九州方面を武者修行中であり、土地土地でいろいろな人に巡り合うのですが、父親同様、彼の謙虚で礼儀正しい人柄がいろいろな人に好かれ、その親切を受けます。さらに、空也の行動描写の間あいだにも、51巻に登場した磐音を取り巻く江戸の人々のその後の暮らし、発展ぶりも出てきますので、興味が尽きません。
小生は磐音シリーズの中でも好きだったキャラクターは霧子という美人の元雑賀衆忍者。元将軍御曹司家基の命を狙いながらも磐音に敗れ、助けられ、その後磐音に私淑して、彼を支援する側に回るのです。寡黙で従順。命がけで磐音の家族を助け、彼の道場を守ろうとします。その彼女は磐音と同じ道場の師範格の弟子重富利次郎と結婚するのですが、今回の空也シリーズ5冊目で、彼女の懐妊が分かりました。あ、彼女もついに母親になるのかと思うと、自分の娘の妊娠が分かったように(自分には子供がいませんが、、)嬉しくなりました。
霧子の夫重富利次郎はもともと土佐藩士の次男坊。嫡男に生まれてないために家督が継げず、道場に居候し剣術に没頭します。大柄で茫洋とした風格だが、一途に霧子を愛します。その後、磐音の縁で彼の出身藩である豊後関前藩(架空)に仕官するのですが、磐音シリーズではもう一人の道場仲間の剣士、松平辰平とともに磐音の逃避行に絡んで重要な役回りを演じています。
その松平辰平も旗本家の次男坊で、家督が継げず、磐音の道場に居候していますが、剣術の腕を買われて九州黒田藩に仕官し、地元の豪商の娘を妻にします。登場人物が皆幸せになっていくのがこのシリーズの特色。空也シリーズの1冊目では、夫とともに豊後関前藩領で武家の妻となっていた霧子が忍者に戻り、空也を助ける役回りでかなり活躍するので、磐音シリーズの続編としてすんなり入っていけました。ただ、磐音シリーズで良く出てきた利次郎、辰平の2人の剣士はまだほとんど登場していません。
空也の武者修行の旅が九州方面であるなら、必ずや福岡方面にも行くことになると思うので、今から辰平との邂逅場面を楽しみにしています。それから、空也は薩摩での武者修行で武家の女性と知り合い、好感を持ち合います。その彼女との恋の行方もどうなるかも楽しみで、続編が待たれます。

上の写真は、南房総鋸山中腹の石像。